新型クラウンの“仕上がり”はどうなのか、チェックした:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)
新型クラウンが登場した。前編では「なぜ大変貌を遂げたのか」その理由などを紹介したが、後編では「仕上がり」を解説する。デザインやインテリアなどは……。
気になる点が2つ
さて、ずいぶんと持ち上がるなあと思うかもしれないが、気になる点は2つある。
1つはやはりGA-Kプラットフォームの限界である。それは一部を除いて性能不足ということではない。シャシー性能そのものに概ね不足はない。実際にやってみたわけではないが、その手前までの挙動をみると限界域に持ち込んだときの挙動は、おそらくは安心安全方向のもので、15代目の様な追い込めば追い込むほど精度感が強まっていく攻めたものではない。
先代のデビュー時に「クラウンをニュルで鍛えてどうすんだ」という声はかなりあったので、そうした意味では今回の方向は正しいことになる。足りる足りないの先の領域での余剰性能において、今回のモデルは無駄を省いている。
もう1つ、ここが「一部を除いて」と書いた部分だが、床板の振動問題である。これはTNGA世代の横置きエンジンプラットフォームに共通する問題で、Cプラットフォームほどではないものの、Kプラットフォームもまたその点において最上級ではない。そこには15代目に採用されていた、縦置きレイアウトかつ、フラッグシップシャシーのGA-Lプラットフォームとの差が出ている。深いレベルでの高級感は先代の勝ち。新型はそれと比べると見劣りするが、いろんな意味で最適化だとも言える。
身もフタもない話をすれば、GA-Lはフラッグシップシャシーであり、GA-Kはひとつ下。そこには違いがあって当然だ。そして何より、新型はそのぶん安くなってもいる。ほぼ使わない領域での走りの質と、ひどくはないが、上にはもっと上がある床の振動。それらを高レベルで追求したクルマがマーケットから支持されなかったのであれば、それらの性能の犠牲になっていた価格を下げて余剰を切るのは常道だろう。やっていることには文句は付けられないが、15代目をなくした今になって、少し残念な気持ちは否めない。
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