結局「SONYのクルマ」は買えるのか? ソニー・ホンダが“チラ見せ”したそれぞれの思惑:本田雅一の時事想々(2/5 ページ)
ソニーグループと本田技研工業が、次世代EV開発での連携のため合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」を発足した。協業にあたり、どのような製品を作り、業界にどのような影響を与えることを狙うのか──。これまでに明かされた情報から透けて見える、ソニーとホンダのそれぞれの思惑とは?
ソニー・ホンダモビリティのクルマは、どのブランドになるのか?
3月に話を始めて、10月には設立会見という速度感には驚かされる。ただ、それだけにソニー・ホンダモビリティがどのような会社で、どのような製品を、どんなブランドで販売するのかについては、記者会見でもふんわりとして見通せなかった、というのが率直な感想だ。
新しいニュースはほとんどなかった。全くの新情報というと、正式にジョイントで事業を立ち上げていくことと、ハードウェアとしてのEVの生産は、調達から設計、生産、流通、保守に至るまでホンダがバックアップすることが明確になったことくらいだろう。
言い換えれば、冒頭で言及した“SONY”バッジを付けた車が販売されるのかについて、またソニー・ホンダモビリティとソニー・モビリティの関係についても語られていない。
両社のジョイントベンチャーが、ほぼ既定路線として話し合いをしていることを発表していたのだから、ソニーとホンダのエンジニア同士が異なる文化的背景をもちながらも、互いにシンパシーを感じ、同じ目標に向かって新しい事業を興していくイメージを共有できたことは間違いないのだろう。
では、ソニー・モビリティはソニー・ホンダモビリティとは別途、独自に“SONY”バッジを掲げたクルマを作り、販売するのだろうか?
その答えは「ノー」だった。つまり、CES 2022で発表された“事業化検討”を進めた結果、行き着いたのがソニー・ホンダモビリティということである。よって、ブランド展開の計画などは未発表だが、ソニー自身が“SONY”バッジのクルマを販売することはない。
一方で、ホンダと強く結び付くことで、事業化を検討する子会社を設立という“第一歩”から、一気に部品調達から生産、流通、保守までをカバーできるパートナーを見つけることができたというわけだ。
今回の発表のタイミングを考えるならば、話し合いの開始から実際にジョイント事業を立ち上げることを決めるまで、おそらく半年未満の時間しか使っていないと考えられる。
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