アマゾンで増える「送料ぼったくり」被害 “誰だって気づくはず”の手口のウラ側:本田雅一の時事想々(4/4 ページ)
Amazonで“ぼったくり”な送料を設定する業者から、意図せずに商品を購入してしまう被害が後を絶たない。一見単純なシカケに、引っ掛かってしまう人が少なくないのはなぜなのか? “誰だって気づくはず”の手口のウラ側を探り、問題の本質に迫る。
システムの改修も追い付かない? 悪質業者とのイタチごっこ
送料の水増し請求に関して、最も古くから行われていたの古書の販売だろう。
古本は同じタイトルに対していくつも存在し、同じような価格で多数のリセラーが並ぶのが当たり前。その中で1円に設定することで目立たせ、送料を多めに取ることで採算を合わせていた。少なくとも当時は法外な価格はつけられておらず、単なる商売上のコツのような形で使いこなしていた出品者が多かった。
しかし、上記の例は明らかに許容範囲を超えたものだ。
実はAmazonマーケットプレイスの本来のルールでは、高すぎる送料設定は削除対象となる場合がある。実際に出品者が交流する掲示板では、数千円の送料を設定した商品が出品停止されたとの訴えも見つけることができた。おそらく過度な送料設定に関して、自動的に発見して対策するアルゴリズムが動いていると想像される。
ではなぜ法外な送料の出品者が放置されているのか。実際にそのように明記されているわけではないが、おそらく送料水増しの検出ツールが国内に拠点のある出品者にしか機能してないのではないだろうか。海外発送であれば、その商品によっては数万円の送料となるケースも想定できるからだ。
しかし、現実に法外な送料の出品者が放置されているケースがあるのは明らかだ。海外発送であれば、その商品によっては数万円の送料となるケースも想定できるため、海外業者が除外されている可能性もあるが、国内の登録住所でも数万円の送料設定を放置されている例を見かけた。なんらかの抜け穴があるのかもしれない。
なお、届いた商品に問題がない場合、返品する場合は購入者都合による返品となる。商品の代金は返ってくるが配送料は戻らないルールだという。万が一、詐欺などの“トラブル”として認められた場合でも、送料を含めてAmazonが保証する金額は30万円が上限であることは覚えておきたい。
Amazon側はプラットフォームとして提供している立場から、マーケットプレイス出品者に明確なルールを示した上で、システム上で悪質な業者を検出する技術開発や運用に取り組んでいることは確かだ。しかし一方で、不利益を被っている消費者、ルールを守っている良心的な出品者が数多くいることもまた事実である。
プラットフォームとして流通基盤を提供しているだけとはいえ、そこに手数料は発生している。今回の問題に特化して言及するならば、送料にさえ手数料が発生しており、モラル的な観点からもAmazonにも監督する責任の一端はあるといえるだろう。ありきたりの言い方だが、正直者がバカを見るシステムとはならないよう改善に努めてほしい。
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