アマゾンで増える「送料ぼったくり」被害 “誰だって気づくはず”の手口のウラ側:本田雅一の時事想々(3/4 ページ)
Amazonで“ぼったくり”な送料を設定する業者から、意図せずに商品を購入してしまう被害が後を絶たない。一見単純なシカケに、引っ掛かってしまう人が少なくないのはなぜなのか? “誰だって気づくはず”の手口のウラ側を探り、問題の本質に迫る。
真面目な販売者がとばっちりも カート取得合戦の被害
Amazonマーケットプレイスを巡っては、実際にはPSE基準を満たさないバッテリーなど電源製品が販売される問題や、他ジャンルの低価格製品で良品とレビュー評価点を稼いだ上で後継製品として全く異なる製品を登録し売り抜ける手口、さらに特許侵害や著作権侵害が強く疑われる製品や模造品、類似品の出品問題など、さまざまな問題が発生し、今も本質的には問題解決していない。
Amazon側も対策を施していないわけではないが、偽物を販売する業者ではなく、以前からオリジナル製品を販売してきた出品者のアカウントを凍結するケースも後を絶たないなど、真面目に販売に取り組んできた業者も巻き込まれ、不利益を被っている。
それでもAmazonマーケットプレイスに頼る出品者が多いのは、利用者が多いことに加え、それぞれのECサイトごとに長所もあれば短所もあるからだが、カートの取得合戦は直接的に消費者に被害をもたらす可能性もある手法であり、もっと広く知られる必要がある情報といえる。
カート取得合戦の手法として送料水増しを取り上げたが、他にも(こちらも以前からある古典的手法だが)納期を可能な限り遅らせることで価格を下げる手段も横行している。新製品発売後のピーク時を避けて調達価格を下げたり、在庫を一切持たずに注文を受けてから流通させることでコストを下げて利鞘を稼ぎ、表面価格を下げてカートを取ろうというわけだ。
複数商品を一度に購入する際に“紛れ込んで気付かない”ことも
例えば、ある有名マイクロフォンメーカーの人気ワイヤレスマイクアダプターは、送信機1台のセットが3万8800円、2台5万2800円がおおよその相場だ。送信機1台の価格は3万8000円でPrime配送対応。ところが同じページには、バリエーションモデルとして送信機2台のセットが1万1778円で販売されているように見える。
そちらには「Prime」のマークはないが、Prime限定で検索して送信機1台モデルを選んだ消費者が、そのバリエーションモデルをクリックすると筆頭の販売者として選択肢として選ばれるのは、Prime非対応の1万1778円で販売する業者に”自動的に”切り替わる。ちなみにこの販売者が設定する送料は5万8000円。納期は2〜3週間で、発送には6〜7日も要すると書かれていた。
別の事例では著名ブランドの外付けハードディスクが、3テラバイト・5テラバイトモデルだけ他のモデルに比べて低価格に設定されていた。1テラバイト・2テラバイト・4テラバイトの3つは妥当な価格設定で「Prime」マークが見えるが、残りの2つのモデルだけ割安なのだ。
こちらはワイヤレスマイクシステムとは異なり、あまり極端な価格設定にはなっておらず、4テラバイトモデルの1万5691円に対し、5テラバイトが1万2343円。確かに安すぎるが、Amazonの場合、もっとも多く流通している人気バリエーションの方がお買い得に設定されていることもあるため、コロッとだまされる人はいるだろう。注文すると2万6000円の配送料が付加される。
実はPCパーツにはこうした送料水増しが多く、メモリモジュールや電源ユニットなどにもよくみられる設定だ。これらの製品はまとめて1台分を注文することも多く、他のパーツに紛れて異常な送料に気付かないケースもあるかもしれない。
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