アマゾンで増える「送料ぼったくり」被害 “誰だって気づくはず”の手口のウラ側:本田雅一の時事想々(2/4 ページ)
Amazonで“ぼったくり”な送料を設定する業者から、意図せずに商品を購入してしまう被害が後を絶たない。一見単純なシカケに、引っ掛かってしまう人が少なくないのはなぜなのか? “誰だって気づくはず”の手口のウラ側を探り、問題の本質に迫る。
ゲーム感覚で“カートを取る”業者たち
“カートを取る”とはどういうことなのか。
ご存じの通り、Amazonの販売ページでは同じ商品を多数の流通業者が販売している。Amazon自身が販売しているものもあれば、Amazonの流通システムを利用したメーカーや代理店、あるいは既存販売店やブローカーのような業者も相乗りしており、消費者はその中から自由に販売者を選んで購入できる。
そうした競合関係の中で、顧客が自分たちを販売者として選んでカートに商品を入れることを“カートが取れる”と表現する。カートを取るために最も効果的なのが、相乗りの販売ページでリストのトップになり、そのページを表示した時に最初に選ばれる販売者になることだ。
複数の販売者が同じ商品ページに相乗りしている場合、以前は製品価格と送料の合計が優先順位を決めていたが、今年4月ごろからシステムの振る舞いが変化し、製品価格が最も安い販売者がリストの筆頭に来るようになった。
つまり、商品価格を安くすることでリストの筆頭になれる。そのため、送料を水増しすることで帳尻を合わせる業者が増えているのだろう。
「出品業者の掲示板では、“今日は結構カートが取れたよ”などと情報交換がされてるんですよ。われわれのような古参の出品業者は、Amazonマーケットプレイスの仕組みを使い、ゲーム感覚で売り上げを出そうという出品者の自慢話を苦々しく読んでます」
そう話してくれたのは、あるAmazonの古参出品者だ。彼は、安全基準を満たさない偽装モバイルバッテリーや偽物の相乗り販売など、登録業者がAmazonの仕組みを使って製品を販売できるAmazonマーケットプレイスを悪用する販売業者の情報を、数年前から定期的に提供してくれている。
なぜ「苦々しく」感じているのか。
それは、Amazonの販売システムの仕組み、特徴を使ってゲーム感覚でカートを取る出品者によって、真面目にAmazonを通じて商品を販売してきた業者にも不利益が生じているからだ。
関連記事
- “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - アマゾンの新しい返品方法 お金を返し、商品は回収しない──なぜ?
米国は、日本に比べて返品OKの小売店が多い。米アマゾンなどの大手小売りでは、返金するのに商品は回収しない「Keep it」という新しい返品方法が進められている。なぜ、このような手法を取るのか? - 「課長にすらなれない」──絶望する40代社員が増えるワケ
真面目に勤めてきたが、上の世代とは違い「課長にすらなれない」──そんな状況に絶望する40代社員が増えています。減り続ける管理職ポストの実態と、深刻な賃金格差とは。「肩書きなき40歳問題」について河合薫氏が解説します。 - 「氷河期の勝ち組」だったのに……40代“エリート課長”に迫る危機
自分をエリートだと信じて疑わなかったサラリーマンが、社内の方針転換により出世のはしごを外されることがある。エリート意識や、能力主義への妄信が生む闇とは──? - オンキヨー破産の反響に“大きな誤解” オーディオは「ノスタルジックなビジネスではない」と言えるワケ
オンキヨーが、5月13日に自己破産を発表した。この件に関連して、オンキヨーをかつてのオーディオブームに乗じ、今は勢いを失った日本ブランドの代表として“ノスタルジックな論調”で語る言論が多かった。しかし、筆者はオンキヨーは「伝統的なハイエンドブランド」という立ち位置ではなく、またオーディオビジネスの本質をつかんだブランドは今も求められていると指摘する。オーディオ業界で、何が起きているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.