今は円安なのに、なぜ「円高時に儲かること」をするのか? トヨタ決算書に見る、為替変動の影響:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(5/6 ページ)
最近は円安が大きく進んでいて、ドル円は150円を超え、為替介入があったりと非常に大きな話題となっています。今回は為替の変動が、企業の業績にどのような影響を与えていくのかを、グローバル企業であるトヨタ自動車(以下、トヨタ)の決算を具体例にしてみていきましょう。
他にも、為替の影響が出てくる項目はあります。そのうち1つが、「為替差損益」というものです。為替と名前がついていますので分かりやすいですが、これは「本業の営業活動以外で出た為替の損益」を表しています。
例えば、グローバルに事業を展開しているトヨタは、もちろん多額の外貨を抱えています。円安が進めば、当然外貨においては含み益を抱えていることになります。そうした影響の他、先述した為替のリスクヘッジの取り引きの影響の一部も、この為替差損益に表れています。
また、企業間取引では掛け取引(取引代金をまとめて後払い)が基本ですが、ドル建ての取り引きで1ドル100円の時に売ったものを150円の時に代金を回収するとなれば、円ベースでは50円分、利益が増えることになります。このように、本業の経済活動以外の為替の変動による影響が為替差損益に表れます。
為替差損益はプラス1832億円となっていて、円安が進む中で大きな好影響を受けています。多額の外貨を持っているため、円安の影響だけでも多大なはずです。
ただし、トヨタのように外貨建て取引の多い企業では、外貨は外貨のまま取り引きに利用されることが多いですから、円換算した含み益が出ていたとしても、企業の実際の事業に大きな好影響は見込めないでしょう。
大幅増加した「包括利益」とは?
増収減益だったトヨタですが、「包括利益」を見てみると前期が1兆1458億円だったのに対して、今期は1兆6883億円。5400億円も大幅に増加しています。
なお、包括利益とは普段ニュースで見るような通常の利益とは異なります。利益という名前はついていますが、会計や税務的な利益ではなくそれこそ課税の対象でもありません。これも会計の知識が必要な部分なので詳しくは説明しませんが、通常ニュースになるような利益よりもう少し取り扱う範囲を広げて企業価値の増減を表しているものと考えてください。
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