コラム
度を超えたクレームを「丸く収めたい」上司、部下に謝罪を強要──カスハラが生んだパワハラに有罪判決:弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」(3/3 ページ)
顧客や取引先から不当な要求やクレームをつけられる「カスタマーハラスメント」(カスハラ)。企業が対応を誤ると、裁判に発展することがあります。中には、誤ったカスハラ対応がパワハラを引き起こすケースも。
企業が取るべき対策とは?
小売店の従業員と買い物客がトラブルになり、従業員が会社に対し、安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求訴訟を提起した事例です。
裁判所は、
- 会社が、誤解に基づく申出や苦情を述べる顧客への対応について、入社テキストを配布して苦情を申し出る顧客への初期対応を指導し、
- サポートデスクや近隣店舗のマネジャーなどに連絡できるようにして、
- 深夜においても店舗を2人体制にしていた
として、店員が接客においてトラブルが生じた場合の相談体制を十分に整えていた、すなわち安全配慮義務を尽くしていたと評価しました(東京地裁2018年11月2日判決)。
十分なカスハラ対策をすることが、企業の法的リスク回避にも役立つことが分かります。従業員が気軽にカスハラ被害を相談できる窓口を設置することや、不合理な要求をする顧客には組織的に対応するルールを定めるなど、できることから取り組みましょう。
また、こうした対策を万全にしても、顧客側の意識が変わらないと、なかなかカスハラはなくなりません。「ハラスメントを許さない」というメッセージを記した啓発ポスターなどを活用し、顧客に対しても、企業の毅然(きぜん)とした姿勢を伝えていくことが大切でしょう。
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