レオパレス21「赤字686億から復活」の大きな誤解 施工不備問題が残した“傷跡”と未だ苦しい実態:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(4/6 ページ)
レオパレス21は施工不備発覚が社長の引責辞任にまで発展するなど、大きな問題となりました。この影響で一時は巨額の赤字を抱えましたが、22年3月期には黒字に転じたため、現在は回復途上にある──この見方は、決算書に表れる「ある項目」を知ると、ガラリと変わります。
ここまで理解できたところで、次は営業キャッシュフローという本業でどのくらいお金を稼げているのかという指標の推移も見てみましょう。
引当金の影響で686億円の赤字になっていた2019年3月期は、実際はキャッシュアウトが少なかったということで営業キャシュフローは72.1億円と小幅なマイナスにとどまっています。
一方で21年3月期は、赤字の額としては236.8億円まで縮小したものの、営業キャッシュフローは408.1億円のマイナスと赤字幅を大きく上回るマイナスとなっています。補修工事が本格化し、赤字の額よりだいぶ大きなキャッシュアウトが起きていたことが伺えます。
また、純利益で118.5億円の黒字だった22年3月期に関しても44.6億円のマイナスとなっており、黒字化したものの補修工事の支払いなども含めると資金流出は止まっていないことが分かります。
利益だけ見れば黒字化だが……
利益の額だけで見れば黒字化と業績回復したようですが、引当金を先に計上したことで利益には影響しない補修工事への支払いが続いていて、実際はまだまだ苦しい状況が続いているということですね。
このように、大幅な引当金が計上されると、利益の額とお金の流れに大きな乖離が生まれます。大きな問題が起き、倒産のような最悪の事態に至るのは、実際に問題が起きて引当金などで大赤字になった年度ではなく、それ以降の利益が回復し始めた時期にもなり得るのです。
決算書を見るときは利益だけでなく、キャッシュフローや財務状況もチェックしておいた方がいいということですね。
さて、あらためてレオパレスの純利益の推移を見てみると、21年3月期には大きく赤字幅は縮小し、22年3月期は118.5億円まで黒字転換しています。非常に大きな業績回復を見せていますが、実はこれにも引当金が関連しています。
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