「給料が上がらない国」ニッポンで生き抜くには、「80歳まで転職」が必要なのか?:厳しい“この先数十年”で起こること(1/4 ページ)
物価高の影響もあって、賃金が上がらないことへの関心が高まっています。過去30年間の賃金は、見事に上がっていません。この状態から抜け出すために、ビジネスパーソンと企業は今後、それぞれどう動くのでしょうか。
物価高の影響もあって、賃金が上がらないことへの関心が高まっています。図1は過去30年間の賃金の推移ですが、見事に上がっていません。
決して大げさな話ではなく、これは近代史上初めてのことです。人々の所得は、江戸時代まではほぼゼロ成長でしたが、明治維新以降はバブル崩壊まで、常に成長してきたからです。
この状態から抜け出すために、ビジネスパーソンと企業は今後、それぞれどう動くのでしょうか。
スウェーデンに学ぶ、個人版「職業大学」
賃金を上げるためにビジネスパーソンが採るべき戦略として、参考になるのは、すでに高い賃金を実現している国々の人の働き方です。
一つは平均賃金が日本の1.23倍(OECDのWebサイトによる。2021年)であるスウェーデンです。この国には職業大学という教育機関があり、失業者はここで1〜3年の教育を受けます。
学費は無料で、在学中は国から、子どもの数に応じて生活補助金や低利ローンが受けられます。希望すれば誰でも入学できるわけではなく、倍率が平均3倍あり、高校成績で入学の可否が決められるという、本格的な教育機関です。
学びの機会に乏しい日本
日本には職業大学のようなシステムはありません。企業の教育訓練意欲は低く、従業員1000人以上の大企業でさえ、従業員1人あたりの1カ月の教育訓練費は670円に過ぎません(厚生労働省『令和3年就労条件総合調査』)。
個人での学習もほとんど行われていません。リクルートワークス研究所が行った「全国就業実態パネル調査」によると、20年に自分の意思で仕事にかかわる勉強をした人は、正社員でも39.6%しかいません。しかも調査した勉強の内容には、本を読む、詳しい人に話を聞く、自分で勉強する、講座を受講するなども含まれています。これでは、少なくともスウェーデンのビジネスパーソンには太刀打ちできるはずがありません。
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