「私の強みは〇〇です」は誤差の範囲でしかない 社会人が知るべき、強みの本質とは:「強み」は誰が決める?(3/3 ページ)
就職活動や転職活動をする上で避けては通れないのが、自分自身の「強み」をアピールすることだが、うまく強みを見つけられない、ライバルとどう差別化すればいいのか分からない、といったことで悩む人も多い。そもそも「強み」とは何か、企業から選ばれる「強み」とはどういうものなのか。人事・戦略コンサルタントの松本利明さんに聞く。
取りやすい資格は自己啓発レベル
――資格は強みとしてアピールできませんか?
松本: 弁護士、公認会計士、税理士など難易度が高い資格以外は、自己啓発くらいにしかならないと思ってください。取りやすい資格はライバルだらけですし、「資格をたくさん持っている=仕事ができる」とは限りません。趣味や自己啓発の一環で資格を取るのは自由ですが、すぐに取れるレベルの資格は転職で有利に働きません。
もちろん、その仕事に必要不可欠な資格は取らないといけません。ですが、それはその業界に転職するためのエントリーチケットくらいに考えておくべきです。
――学歴はどうでしょうか? 社会人になってから大学院に入り、学び直す人もいます。
松本: 現実や仕事がうまくいかなくなってくると、大学院に入学したり、MBAを取得しようとしたりする人が一定数います。これは子どものころから勉強ができて、勉強ができることがアイデンティティー、心のよりどころである人が陥りがちです。
MBAを取得したことで転職で価値が出るのは、せいぜい世界ランキング10位以内の大学院だけです。一歩間違えると、せっかく難関大学を卒業したのにMBAを取得したことで最終学歴のランクを落とし、それが自身のキャリアダウンにつながりかねないリスクがあります。
私たちは、自分をアピールする機会がそもそも少ないのが現状です。そのため、ついつい良いところを見せようとしてしまいがちですが、そもそも「強み」とは何か、誰が決めるのかを認識する必要があります。
後編では、企業から選ばれる強みの作り方を解説する。
松本利明(まつもと・としあき)
人事・戦略コンサルタント。
HRストラテジー 代表。日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員。
外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長級)を経て現職。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の人事の改革に従事し、5万人のリストラと6500人を超える次世代リーダーの選抜や育成を行った「人の目利き」が持ち味。最近は企業向けのコンサルティングに加え、「誰もが、自分らしく、活躍できる世の中」に近づけるため、自分の持ち味を生かしたキャリアの組み立て方を学生、ワーママ、若手からベテランのビジネスパーソンにライフワークとして提供し、好評を得ている。
著書に、『できる30代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)、『稼げる人稼げない人の習慣』(日経新聞出版社)、『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)、『「ラクして速い」が一番すごい』(ダイヤモンド社)など、ベストセラー多数。英国BBC、TBS、日本経済新聞などメディア実績多数。講演実績多数。
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