Twitter買収は終わりの始まりか、イーロン・マスクが夢見るSNSは叶うのか:本田雅一の時事想々(4/4 ページ)
イーロン・マスク氏が10月27日にツイッター社の買収を完了した。経営権を100%掌握したマスク氏は今後、どのようにTwitterを作り変えていくつもりなのか──。その方針や懸念点をITジャーナリストの本田雅一氏が考察する。
商用サービスで公平性は保てるのか?
マスク氏のパーソナリティーに関して、いったん傍におくとして、では彼が言うような、自由闊達で異なる信条を持つ人たちが安心して議論でき、かつウソがまん延する地獄には決してならないネット上の広場を、収益性も求められる企業が作り出すことは可能なのだろうか。
例えばGoogleは、自社の検索システムが「公平で公益性のある設計になっている」と主張するだろう。Googleは常に自分たちが中立性のある、誰の味方でもない立ち位置にいると主張するが、そこに疑問を感じる人はいるはずだ。
他のソーシャルネットワークはどうだろう。そのシステムに巨額を支払う広告主、あるいは成熟した後のSNS全体を買収する企業などの影を感じるものは少なくないはずだ。
マスク氏の発言を額面通りに受け取るなら、彼はあらゆる参加者がフラットな言論の場であるように見えて、実は悪平等な場にもなりうるTwitterに秩序をもたらしたいと考えているのかもしれない。
普段は発言力のないユーザーが、ある日のツイート一つで注目され、多くの人に発言を評価され、フォロワーを獲得することもあるのがTwitterの良さでもあると捉えられてきた。
実社会では発言者が残してきた足跡、あるいは現在の役職や立場などが重視され、発言が届く範囲にも自然と制約が生まれるものだが、そうした垣根を一気に飛び越えられる、飛び越えやすいのがTwitterだ。
しかし、それは本来広がるはずがない、自然に黙殺されるべき情報が拡散する可能性も秘めている。
もし現実社会に近い、発言者の信頼性と発言力の関係性を作れるならば、それは理想だろう。現実には難しいだろうが。
「だからこそ私が!」とマスク氏は言い始めたのだろうが、早晩、ビジネスモデルと理想とするSNSのギャップに悩まされることになるだろう。
関連記事
- “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - アマゾンの新しい返品方法 お金を返し、商品は回収しない──なぜ?
米国は、日本に比べて返品OKの小売店が多い。米アマゾンなどの大手小売りでは、返金するのに商品は回収しない「Keep it」という新しい返品方法が進められている。なぜ、このような手法を取るのか? - 「課長にすらなれない」──絶望する40代社員が増えるワケ
真面目に勤めてきたが、上の世代とは違い「課長にすらなれない」──そんな状況に絶望する40代社員が増えています。減り続ける管理職ポストの実態と、深刻な賃金格差とは。「肩書きなき40歳問題」について河合薫氏が解説します。 - 「氷河期の勝ち組」だったのに……40代“エリート課長”に迫る危機
自分をエリートだと信じて疑わなかったサラリーマンが、社内の方針転換により出世のはしごを外されることがある。エリート意識や、能力主義への妄信が生む闇とは──? - オンキヨー破産の反響に“大きな誤解” オーディオは「ノスタルジックなビジネスではない」と言えるワケ
オンキヨーが、5月13日に自己破産を発表した。この件に関連して、オンキヨーをかつてのオーディオブームに乗じ、今は勢いを失った日本ブランドの代表として“ノスタルジックな論調”で語る言論が多かった。しかし、筆者はオンキヨーは「伝統的なハイエンドブランド」という立ち位置ではなく、またオーディオビジネスの本質をつかんだブランドは今も求められていると指摘する。オーディオ業界で、何が起きているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.