「残業=頑張っている」から「残業=無能」へ──変わりゆく働き方が示す、残酷な現実(2/3 ページ)
コロナ禍による働き方の変化や法改正の影響により、残業の在り方が変化している。かつては頑張っている証だった残業だが、現在はそのように捉えられることが減っているようだ。残業にまつわるデータと各社人事部からのヒアリングを集めると、変わりゆく働き方が示す「残酷な現実」が見えてくる。
8年間で、残業時間はどれだけ減ったか?
実際、残業時間はコロナ禍以降減少している。20年を100とした所定外労働時間指数はコロナ禍前の18年は117.5、19年115.1だったが、21年は105.2、最新の22年7月も109.8。感染拡大が始まった20年が底であることには変わりないが、現在もコロナ禍前には戻っていない(厚労省の「毎月勤労統計調査」を参照)。
また、オープンワークの調査(21年12月16日発表)によると、13年の月間平均残業時間は46時間だったが、以降徐々に減少し、21年は24時間。8年間で、22時間も減少している。ちなみに、仮に月給30万円の場合、46時間の残業代は10万7824円(160時間÷30万円×1.25)。それが24時間なると5万6256円。差し引き約5万2000円の減収となる。
「残業=頑張っている」から「残業=無能」へ?
近年では残業抑制策として「固定残業代」を支給する企業が増えている。固定残業代は、残業時間がゼロでも支給される。固定残業代の労働時間数より労働時間が少ないと、その分得をすることになる。もちろん想定残業時間を超えて残業した場合は超過分の残業代は支払われる。
労務行政研究所の「人事労務諸制度の実施状況調査」(22年2〜5月)によると、「定額残業手当」を支給している企業は10年には7.7%にすぎなかったが、13年に10.7%、18年に12.5%と徐々に増加し、22年には23.3%に上昇している。
また、固定残業代の時間数の設定では、最も多いのは30時間の37.7%となっている。10時間が6.6%、15時間が9.8%。20時間以内の企業が計31.2%も存在する。固定残業時間は会社が想定している残業時間と見なすことができ、それを超えて残業することは「無能」の烙印を押されかねない。
以前のように遅くまで残業している人を「あいつは頑張っている」と評価される時代ではもはやなくなってきている。限られた労働時間内にいかに効率的に仕事をこなし、成果を出すかが大きく問われる時代になりつつある。
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