悲鳴続々、Twitter社の突然解雇 日本の法律では守られない? 弁護士に聞く:外資系は“治外法権”?(3/3 ページ)
ツイッター社の従業員解雇は、日本法人でも実施されている模様だ。中には社用PCが起動しなくなり、社内ネットワークから締め出されたことで解雇を察知した人もいるようだ。外資系企業の従業員は、日本の労働法で守られないのだろうか? 弁護士の佐藤みのり氏に聞いた。
米国法を選んでいたら、大量解雇に問題はないのか?
──米国法を選択していた場合についても聞かせてください。米国法は、比較的、解雇が自由だと言われますが、今回の大量解雇について、日本の法律で縛ることはできなくなってしまうのでしょうか?
佐藤氏: そうとは限りません。米国法を選択していた場合であっても、労働者が、労務を提供すべき地の中の、特定の強行規定(解雇に関するルール)を適用すべきと意思表示した場合、原則、そのルールも適用されることになっているからです(同法12条)。
──つまり、社員側が「日本の法律を適用してほしい」と意思表示すれば、原則そうなるのでしょうか?
佐藤氏: はい、その通りです。以上が原則ですが、例外として、「契約に最も密接な関係がある地の法」が日本法ではなく米国法であると認められてしまうと、日本法は適用されません。
日本の法律は「整理解雇」に厳しい 解雇が無効になる可能性も
── あらためて、日本の解雇に関するルールを教えてください。
佐藤氏: 労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。
米ツイッター社のイーロン・マスク氏は、今回の大量解雇について「深刻なコスト上の問題のため」であると説明しているため、いわゆる整理解雇に当たります。
整理解雇は、使用者(企業)側の都合による解雇です。そのため、解雇の有効性について厳格に判断すべきと考えられており、日本の裁判所では、(1)人員削減の必要性、(2)解雇回避措置の相当性、(3)人選の合理性、(4)手続きの相当性といったポイントを踏まえて有効性を判断しています。
今回の大量解雇についても、こうしたポイントを踏まえて評価した結果、解雇が無効になる可能性は十分あるでしょう。
訴訟も覚悟か?
以上が佐藤弁護士へのインタビュー内容だ。外資系企業といえば、給与が良く労働条件が魅力的な一方で、突然の解雇に文句も言えない──そんなイメージを持つ人が多いかもしれないが、日本の労働法が適用されるケースは決して少なくなさそうだ。
とはいえ、企業が大量解雇を実施する場合、退職金の割り増しや訴訟などの準備があることも考えられる。実際にマスク氏は4日、解雇された全員に対し、法的に定められているより50%多い退職金を提示したことを明かしている。
一方の解雇された社員たちの中にも、集団訴訟や団体交渉のための動きが見られる他、こうした動きをTwitterで呼びかける弁護士なども見受けられる。混乱の余波はどこまで続くか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
スシロー、おとり広告で「信用失墜」し客離れ──それだけではない業績悪化のワケ
最近のスシローといえば、おとり広告の問題で景品表示法に係る措置命令を受けてしまった件は記憶に新しいことでしょう。こういった問題が起きるとどのような影響があるのかを「減損損失」という視点から見ていきます。
社長は「トヨダ」氏なのに、社名はなぜ「トヨタ」? “TOYODA”エンブレムが幻になった3つの理由
日本の自動車産業をけん引するトヨタ自動車。しかし、同社の豊田社長の名字の読み方は「トヨダ」と濁点が付く。なぜ、創業家の名字と社名が異なるのか? 経緯を調べると、そこには3つの理由があった。
GMOの根幹にある「55カ年計画」とは? 安田CFOが明かす、市場や売上起点ではない経営
「CFOの意思」第6回の対談相手は、前編に引き続きGMOインターネットグループ副社長兼CFOの安田昌史氏。太陽黒点の周期に基づく「55カ年計画」と、目標達成が当然のGMO式経営とは?
「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。
「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。
