“ノック音”を66%も減らした! ぺんてる「Calme」の開発秘話 :あの会社のこの商品(3/6 ページ)
店頭に並ぶ各社のボールペン。一度気に入ったモノが見つかると長く使い続けられスイッチが起きにくいが、いま「静音ノック」という付加価値で注目を集めているのが、ぺんてるの「Calme」である。状況によっては不快に感じかねないペン先を出すときのノック音をどのようにして低減したのか?
デザインを先に決めてから開発を進めた理由
Calmeは単色と多色、多機能ではノック音を低減する仕組みが異なる。
単色はカム機構を採用。ノック部に回転子と摺動子(しゅうどうし:滑らせて動かすこと)が組み込まれており、ノックすると回転子が回転運動、摺動子が上下運動をする。このとき、摺動子が回転子の回転運動に伴う衝撃を緩和。最後まで指を添えてノックすれば、芯が静かに出てきてくれる。一方、多色・多機能は、後軸の頭の内側にメチルゴム製の緩衝材を入れることでノック音を小さくした。
これらの工夫により、ノック音を同社従来品と比較して66%低減することに成功した。中沢氏は開発をこのように振り返る。
「それぞれの消音のアイデアを思いつくのには、それほど時間はかかっていません。むしろ実現するための技術開発のほうが大変でした」
単色のカム機構は他のボールペンでも採用されているモノだが、クリップでノックすることからクリップの取り付け構造に苦心した。クリップの内側には摺動子をつかむ爪があるが、これだけで摺動子が安定した上下動を維持できるか、クリップを爪で弾いても摺動子をしっかりつかんでいることができるか、といった点から、爪の深さや長さを検討した。
多色・多機能では、ゴムの硬度とバネの強さのバランスを何度も検証した。音を抑えすぎると衝撃に変わることが分かったことから、衝撃を感じることなく音が静かになる最適な加減を探った。
Calmeはデザインを先に決めてから静音機構を組み込んだが、デザインに合わせて開発するのは簡単ではなかった。中沢氏はこう話す。
「デザインとしての正解と技術的な効率のより良い設定を求めて切磋琢磨した際、三宅氏という卓越したデザイナーの視点が軸となりました」
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