“ノック音”を66%も減らした! ぺんてる「Calme」の開発秘話 :あの会社のこの商品(5/6 ページ)
店頭に並ぶ各社のボールペン。一度気に入ったモノが見つかると長く使い続けられスイッチが起きにくいが、いま「静音ノック」という付加価値で注目を集めているのが、ぺんてるの「Calme」である。状況によっては不快に感じかねないペン先を出すときのノック音をどのようにして低減したのか?
日本ならではの色を軸に採用
発売直後の売れ行きは予想以上だった。ノック音の静かさは小売店やユーザーのウケが良く、デザイン性の高さや革調グリップの評判も高い。輸出もアジア中心に始まっており、欧州からも引き合いが来ている。
軸色別に見ると、ブラックの次にカーキの売れ行きが健闘。Calmeでは推しの色だというカーキは、ぺんてるという日本企業がボールペンをつくることの意味を考えた末に採用された。中沢氏はこう話す。
「軸色はワビ・サビの世界の中で成立するモノをモチーフにしています。黒は鉄瓶、グレイッシュホワイトは漆喰からイメージしたのですが、カーキは茶道具からイメージしました。日本の会社がつくることの意味を考え、日本だからできるモノを出すことにこだわりました」
ただ、課題もある。製品戦略部マーケティンググループの飯塚愛美氏はこう指摘する。
「ボールペンは競合製品が多いので、店頭でいい場所を確保するのが至難のワザです。新しい製品もどんどん出てきますので、時間が経つにつれて勢いがだんだん落ちてきました」
認知を高めて再び店頭で注目を集めるため、そしてユーザーから「カラーバリエーションを増やしてほしい」という声が多いことから、同社は22年10月、新しい軸色を追加した。追加したのは新定番色のベージュとターコイズブルー、限定色の空翡翠(そらひすい)と栗紫(くりむらさき)の4つ。単色・多色で用意した。
Calmeの新色追加は今回が初めて。生活の道具として尊敬できる存在か? という観点から検討して色を決めた。限定色の空翡翠と栗紫という色名は、ぺんてるがつくった造語である。
限定色について飯塚氏は、「好みが分かれそうな色味のため、限定色で展開したほうがササると判断しました。一方で、長く安定して売れそうなモノは定番色に採用しています」と話す。情緒的なネーミングは文具トレンドの1つで、ネーミングに引かれて購入してもらうことも期待している。
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