社内で行き詰まったDXは「ダイエット」になぞらえるとうまくいく:DXの本当の進め方(後編)(3/7 ページ)
日本企業のDX成功率は約10%だという。社内でDXの議論が進まないのはなぜか? DXを推進するための方法を「ダイエット」を例に挙げて解説する。
ダイエットで費用対効果を考えるか?
前半の記事でも取り上げた話題になるが、ダイエットをやるかどうかの判断基準に、ROI(Return on Investment:費用対効果)を挙げる人がどれだけいるだろうか。30万円かけてトレーニングすると、100万円の効果があるという試算をしてダイエットに取り組むという人は非常にまれではないかと筆者は思う。
ありたい姿への変化・変革を志して決断するのがダイエットであり、その点はDXにも共通する。ダイエットにかけた費用に対して、どのくらいの経済的な効果があるかを定量的に”考える”のは少数派ではないだろうか。すなわち、繰り返しになるがダイエットの費用対効果が「分からない」のと同様、DXの費用対効果も「分からない」のである。
これは無尽蔵にお金を使うべきだという話とは全く違う。ダイエットにもさまざまなやり方があり、どれにどのくらいお金をかけるべきかについては個人レベルでも吟味するであろうし、ある程度の予算も設定するはずだ。つまり、ダイエット自体の費用対効果は「分からない」が、ダイエット”法”の費用対効果は存在する。
同様に、DXにもさまざまな”デジタルな手法”が含まれており、企業としてもかけられる予算には限度がある。DX自体の費用対効果は「分からない」が、DXの名の下で始動する各種デジタルプロジェクトの中には、投資対効果を明確に計算できるものもあるだろう。大事なことは「方法」の費用対効果を「変革」の費用対効果と取り違えないことである。
変革を始めるのは経営陣の意思ひとつで決めることができる。かけるべき予算も、財務状況と相談しながら定められるだろう。その意思と条件のもと、プロジェクトに適切な予算を振り分け、その予算の執行に関して費用対効果を吟味すれば良い。決して「費用対効果があるから」DXを始めるという順番に考えるものではないのだ。
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