豊橋鉄道×豊橋市×テクテクライフ、スタンプラリーのDXで観光力アップ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/7 ページ)
豊橋鉄道の電車やバスを利用したデジタルスタンプラリー「テクテク豊橋ブラ散歩」が2023年2月28日まで開催中だ。豊橋鉄道の観光集客と、豊橋市の公共交通利用推進に貢献するイベントという位置づけだが、実はフリーきっぷからMaaSへの進化のステップでもある。
テクテクライフはスタンプラリープラットホームだ
「テクテクライフ」は地図上で自分が存在した区画(街区)を塗りつぶしていくゲームだ。生活している場所、旅した場所を塗りつぶしていくと、アプリの地図上で自分の足跡を残した気分になる。いつもより遠くまで散歩してみようとか、旅の行きと帰りでルートを変えて塗りつぶそうという気分になるし、ちょっとした達成感を得られる。常にスマートフォンを見ながら歩くと危ないから、通過した区画を「予約ぬり」として24時間保持してくれる。散歩の休憩や、自宅や宿に落ち着いた時に塗ればいい。
塗りつぶす地図の対象は日本全国だ。自分が通った場所を塗りつぶす「げんちぬり」でポイントが手に入り、そのポイントを使って、塗りつぶした隣の区画を塗る「となりぬり」ができる。字(あざ)、さらに区や市など行政地域を塗りつぶすとボーナスポイントをもらえる。ポイントを消費するとげんちぬりの対象範囲を広げる機能などを使える。
月額課金すれば、ほかのアプリを使用中でも「げんちぬり」が可能な「バックグラウンドぬり」ができる。長距離移動したときなど「予約ぬり」の数が多いときは、都度課金で1000区画、5000区画、10000区画の一括塗りもできる。1000区画もポチポチ塗っていくとかなり時間がかかるから、こういう「ちょっと便利に」機能でマネタイズしているわけだ。
テクテクライフには「地図を塗る」という基本の遊び方のほかに「チェックイン」機能がある。日本全国の駅にチェックポイントが設定されており、チェックインボタンを押すとスタンプが表示される。例えば「ある路線のすべての駅を集める」という遊び方もできる。駅のほかに都道府県庁、城、運営スタッフおすすめのサウナ、ラーメン屋、名所などがチェックポイントになっている。
「テクテク豊橋ブラ散歩」は、このスタンプラリー機能を使う。豊橋市内に26カ所のチェックポイントが設置され、「市電沿線てくてくコース」「豊橋珍景!映え映え!コース」など5コースのスタンプラリーが設定された。1コースをクリアするごとに鉄道模型や鉄道グッズなどが当たるキャンペーンに応募できる。
チェックポイントは豊橋鉄道総合企画部が選定した。「豊橋鉄道と豊橋市の有名スポットと、担当者が好きな店」とのこと。取材はキャンペーン開始から約1カ月後だったけれども、商店からは早くも「テクテクのお客さんが来た」と評判が良いという。チェックポイントは位置だけではなく、店内に掲示された看板メニューなどのキーワードや、前出の「いこまいコード」が必要になる。つまり、デジタル版のフリーきっぷを買わないとプレゼントに応募できない仕掛けだ。豊橋鉄道の売り上げに貢献する。
テクテクライフは過去に人気アニメ『エヴァンゲリオン』とコラボしたスタンプラリーを実施しており、名古屋鉄道や天竜浜名湖鉄道でもスタンプラリーを実施した。これらは映画とのタイアップが主だった。網走市や釧網本線、そして今回の豊橋市は少し趣が異なり、自治体が観光誘客を意図している。地図を塗るゲームだけではなく、スタンプラリープラットホームとして地方創生に貢献する。網走市でも聞いたけれど、デジタルプラットホームで専用アプリを作るとコストが高すぎる。それに比べて、あらかじめシステムがあり、認知度の高いゲームを使わせてもらう利点は大きい。
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