豊橋鉄道×豊橋市×テクテクライフ、スタンプラリーのDXで観光力アップ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/7 ページ)
豊橋鉄道の電車やバスを利用したデジタルスタンプラリー「テクテク豊橋ブラ散歩」が2023年2月28日まで開催中だ。豊橋鉄道の観光集客と、豊橋市の公共交通利用推進に貢献するイベントという位置づけだが、実はフリーきっぷからMaaSへの進化のステップでもある。
デジタル先進都市豊橋、DXとMaaSのステップへ
豊橋市にとって「テクテク豊橋ブラ散歩」はMaaS(Mobility as a Service、移動サービスの最適化)のステップでもある。実は豊橋市はスマートシティ先進都市だ。総務省の「地方自治情報管理概要」に基づいて「日経グローカル」が採点した電子化推進度ランキングにおいて、豊橋市は10位である。行政窓口の電子化が進み、「所得・課税証明書」「上下水道利用」「公文書公開」などの手続きをオンラインで利用できる。職員の業務システムをAIで最適化し、902時間の業務を479時間まで削減した。総務省の自治体行政スマートプロジェクトでは税務業務部門の代表幹事だ。
◆「電子政府」内外動向を探る(第4回)豊橋市(愛知県)(21年4月20日、リコー経済社会研究所)
チェックポイントにはないけれど、筆者が推すもうひとつの豊橋名所は「豊橋駅地下駐輪場」。駅前再開発で設置した広大な駐輪場だ。東口(とめちゃりん東)は3300台の自転車と900台の原付自転車、西口(とめちゃりん西)は1200台の自転車と100台の原付自転車を収容する。圧倒的な規模で駅前の違法駐輪を一掃したという。18年前に見たとき、こんな駐輪場が自宅最寄り駅に欲しいと思った(筆者撮影)
豊橋市は、さらにDXによる業務効率化と市民サービスの拡充を進めている。そのなかにはもちろんMaaSも入っている。実は「テクテク豊橋ブラ散歩」の参加条件となっている「いこまい豊橋 電車バス1日フリー乗車券」もMaaSの取り組みのひとつ。名古屋鉄道が提供するエリア版MaaSアプリ「CentX」サービスで購入できる。
「CentX」は名古屋鉄道の公式アプリ「名鉄 Touch」をリニューアルしたサービスだ。アプリの経路検索結果から鉄道などの移動と観光がセットになったチケットや、バスや船舶で利用可能なフリーきっぷなどをキャッシュレスで購入できる。ここに豊橋エリアとして参加しており、チケットとして豊橋市用の「いこまい豊橋 電車バス1日フリー乗車券」「豊鉄バス1日フリー乗車券」「渥美半島サイクルきっぷ」「渥美線フリー乗車券」「市内線フリー乗車券」を用意した。
MaaSはもともとフィンランドの首都・ヘルシンキで始まったサービスで、市民は月額制のアプリを利用すれば、鉄道、バス、フェリーやタクシーも含めた交通機関が乗り放題になる。旅行者にも4つのゾーンのうち2カ所以上を選んで利用できる仕組みがある。アプリは経路検索機能があり、ゾーン乗り放題チケットも兼ねる。
MaaSとは本来、このようなシンプルなサブスクリブションサービスだ。国土交通省もそこを目指していると思うけれども、実態として同じ地域に複数の事業者が存在し、統合できないため実現できていない。現在は「フリーきっぷを電子化して特典を付ければMaaS」という状況だ。
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