豊橋鉄道×豊橋市×テクテクライフ、スタンプラリーのDXで観光力アップ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/7 ページ)
豊橋鉄道の電車やバスを利用したデジタルスタンプラリー「テクテク豊橋ブラ散歩」が2023年2月28日まで開催中だ。豊橋鉄道の観光集客と、豊橋市の公共交通利用推進に貢献するイベントという位置づけだが、実はフリーきっぷからMaaSへの進化のステップでもある。
MaaSの思想を例えるなら「塩と胡椒を毎日使うなら、塩胡椒という瓶が1つあればテーブルがスッキリ」となるはず。しかし、「やっぱり塩だけ、胡椒だけの瓶も必要だよね」となり、2つの小瓶を1つにまとめようとしたのに3つに増えちゃった。これが日本版MaaSの現状だ。必要なものになるはずが、あってもなくてもいいものになっている。だから流行らない。
豊橋市内に限定するなら、バス事業者は豊鉄バスだけ。鉄道は豊橋鉄道の路面電車と渥美線の11駅。JR東海の在来線で4駅だ。東海道新幹線と名鉄は豊橋駅だけだから対象から外すとして、あとはタクシーを巻き込めばヘルシンキ並みのMaaSになる。市民向けの月額サブスクと旅行者向けのゾーンチケットを実装すれば理想のMaaSが完成する。「塩」も「胡椒」も「塩胡椒」もいらない。ましてや「アジ塩胡椒」もいらない。ドラえもんに出てきた、なんでもおいしくする万能調味料「味のもとのもと」を目指してほしい。
そして今回、テクテクライフの役割は「フリーきっぷからMaaSへの橋渡し役」になった。今後は「MaaSに楽しさを提供する」となるだろう。実用的なMaaSにゲーム的な楽しさが加わる。それこそが日本的なMaaSだと思う。
スタンプラリー期間中は月に1度「ベテラン運転士 今泉さん」のトークイベントを開催する。10月のイベント会場はブラックサンダーのラッピング車両だった。チョコレート菓子「ブラックサンダー」の工場が豊橋にある
(取材級力/豊橋鉄道)
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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