なぜプリウスは“大変身”したのか トヨタが狙う世界市場での逆転策:高根英幸 「クルマのミライ」(4/6 ページ)
トヨタが新型プリウスを発表した。発売はまだ先なので、車両の詳細なスペックなどは分からないものの、その変貌ぶりが話題になっている。それにしても、なぜトヨタはこのタイミングで発表したのか。背景にあるのは……。
1.8Lは国内市場向けか、ならばいっそ1.5Lでも
もちろんこれまでのプリウスユーザーへの配慮も忘れていない。それが1.8Lエンジンを残したことだ。だが個人的にはエントリーグレードは1.5L3気筒エンジンを搭載し、モーターとバッテリーを強化したモデルであってもよかったのではないか、と思っている。モーターより加速性能の確保ができれば、エンジンはより小さくて済む。
エンジンの種類が増えればトータルでの生産コストは上昇し、1台当たりの利益を薄めてしまう可能性がある。しかし国内市場を見ると、円安や原油高の影響で燃料価格も高騰し、1年間の走行距離が縮小傾向にある。
そのため120キロが最高速度の高速道路でさえ、100キロ以下で巡航するドライバーが多い現状をかえり見れば、求められるのは燃費性能と税金を含めた維持費のトータルコストだ。
新型のスタイリングと室内空間、それに燃費性能だけを求める層には十分な動力性能があり、税金面での負担がヤリスと変わらないのであれば、室内が広く快適で高級感も高いプリウスを選ぶ、というユーザーも増えるのではないだろうか。
スポーティーなスタイリングと高い動力性能、燃費性能を両立すれば海外では“プリウスショック”を引き起こせるかもしれない。だが国内市場ではスポーツカーの販売台数が極めて少ないことからも、加速力の強化を喜ぶ層は、それほど多くはなさそうで、「クルマの高性能=速さ」というのは、もはや古い感覚と言えるのかもしれない。
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