プレイングマネジャーが部下から評価されにくい意外な理由 “背中で見せる”リーダーに足りないことは?:4タイプ別で解説(3/4 ページ)
2019年に実施された調査によると、約9割がプレイングマネジャーとして働いていることが分かった。しかし、リンクアンドモチベーションによると、プレイングマネジャーに対する部下の評価が意外と高くないという。“背中で見せる”リーダーに足りないことは何か、その理由やマネジャーに求められることを解説する。
そもそもマネジメントの役割とは何か?
どのようなマネジャーが部下に支持されるかが明らかになった。ここで、そもそもマネジメントの役割について定義したい。それは「組織の成果に責任を持つこと」である。
例えば、サッカー日本代表の主将になった人が「僕は今日からメンバーの育成を頑張ります」と言うだろうか。「ワールドカップ優勝に向けて頑張ります」と掲げるはずだ。繰り返しになるが、マネジャーの役割は組織の成果に責任を持ち、それを最大化していくこと。そのために中長期的な組織成果の観点に立って、メンバーの育成や仕組みづくりを戦略的に行なっていかなければいけない。
マネジャーがプレイングを続けていると、技術伝承ができず、いつまで経ってもメンバー自身ができるようにならない。最悪の場合にはメンバーが成長する機会を奪ってしまう可能性すらあるのだ。
また、マネジャー自身が成長できないのも問題だ。前述のとおり、マネジャーは組織の成果に責任を負っており、中長期的に組織成果を最大化するために、大局的な視点から戦略的に施策を企画実行していくことが求められる。しかし、プレイングばかりしていてはそうしたことに手が回らなくなる。その結果、マネジャーとしての成長が遅れてしまう。プレイングマネジャーが増加すると、メンバーも育たなければ、マネジャーも育たないという悪循環に陥り、中長期的な組織の成長にもつながらない可能性が出てくる。
一方で、プレイングマネジャーは悪いことばかりではない。実績があるマネジャーがプレイング業務をすることで、短期的には成果をキープできるだろう。また、新規事業など新しい領域へ挑戦する場合にも、マネジャーが自ら動いたほうが機動力は高まり、挑戦した結果としての学びを組織にフィードバックできる質は高まるはずである。
マネジャーが考えるべきは「組織の可能性」と「具体策」
マネジメントにおいて重要なのは、組織で成果をあげるための仕組みをつくること。もちろん、メンバーが今できないのであれば、できるようにさせる必要がある。そのためには「早くできるようになりなさい」と求めるだけでなく、例えば「簡単にできる工夫をする」とか「工程を分けて分業する」といったやり方も必要となる。
料理が得意な人は、一人で全ての工程を行うのが当たり前なので、部下にも一人で作れるようになることを求めがちだが、「あなたはネギを切って」「あなたは調味料を計って」「あなたはご飯を炒めて」というように分業することで、経験の乏しい人でも作れるようになる。
自分ができることをメンバーに求めるばかりではなく、役割分担を変えたり、特化させたりと、他のアプローチも含めて具体策に落とすことが、本来マネジャーがやるべきことだ。マネジメントの語源は「やりくり」。自らプレイングするのではなく、やりくりして成果を出すのがマネジャーの仕事であり、ここが最も肝要なところである。
マネジャーが短期的にプレイングすることを否定するつもりはないが、無思考でプレイングを続けている状態は改善すべきだ。ある程度、解が見えたタイミングで仕組み化して、メンバーができる状態を整えるなど、プレイング業務はメンバーに引き渡し、自分は新しい課題に着手するというように、状況判断をしてやりくりしていくことが大切になってくる。
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