理系学生に告ぐ、日本の自動車産業は「オワコン」ではない:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
ここ数年「日本オワコン論」が語られ、次なる衰退は自動車産業で「数年後には日本が誇るトヨタは滅びる」との主張もある。しかし、それは大前提が間違っている。
EVの普及は重要
ということで、EVの普及はそれなりにハードルが高い。とはいえ、CO2の抑制は社会に課せられた重要課題なので、EVの普及はとても重要な課題であるという認識は間違っていない。「EVなんて話にならない」というわけにはいかない。
普及を進めることはとても大事なのだ。まだまだ頑張って改善していかなくてはならない。ただ、それはかなり長い大変な道のりで、都合良く破壊的イノベーションがやってきて魔法のように全てが変わるというわけにはいかないのである。一歩一歩技術を積み重ねて、未来を変えていくのであって、ブームのバスに乗ったら、イノベーションに一番乗りなどということにはならない。だからこそ優秀な理系の学生がそこに参加して、技術を向上させてくれる必要はずっとなくならない。とても重要なことなのだ。
日本の自動車メーカーはそういうことをちゃんと考えている。だからEVの開発を行いつつ、不足が見込まれる鉱物資源を可能な限り節約して、CO2排出量を下げるハイブリッドの開発や、水素や合成燃料の利用といった多様な技術を開発して、多様なエネルギーの総力戦でCO2削減を進めようとしているのだ。
マルチソリューションとは、可能性のあるあらゆる技術を組み合わせて、リスクを分散させつつ、未来を切り開いていくことを意味している。
「EVにすれば全て解決」のような簡単なやり方で、問題が解消するのであれば、誰も苦労していないし、それこそとっくに世の中の全てのクルマがEVに置き換わっているはずだ。
そういう視野狭窄に陥らずに、さまざまな技術を開発している日本の自動車産業をどの口が「オワコン」などと言うのか神経を疑うところだ。
関連記事
- なぜSUVは売れているのか 「しばらく人気が続く」これだけの理由
街中でSUVをよく見かけるようになった。各社からさまざまなクルマが登場しているが、なぜ人気を集めているのだろうか。EV全盛時代になっても、SUV人気は続くのだろうか。 - なぜプリウスは“大変身”したのか トヨタが狙う世界市場での逆転策
トヨタが新型プリウスを発表した。発売はまだ先なので、車両の詳細なスペックなどは分からないものの、その変貌ぶりが話題になっている。それにしても、なぜトヨタはこのタイミングで発表したのか。背景にあるのは……。 - マツダCX-60は3.3Lもあるのに、なぜ驚異の燃費を叩き出すのか
マツダCX-60の販売状況が、なかなか好調のようだ。人気が高いのはディーゼルのマイルドハイブリッドと純ディーゼルで、どちらも3.3Lの直列6気筒エンジンを搭載している。それにしても、3.3Lもあるのに、なぜ燃費がよいのだろうか。 - なぜ「時速5キロの乗り物」をつくったのか 動かしてみて、分かってきたこと
時速5キロで走行する乗り物「iino(イイノ)」をご存じだろうか。関西電力100%子会社の「ゲキダンイイノ」が開発したところ、全国各地を「のろのろ」と動いているのだ。2月、神戸市の三宮で実証実験を行ったところ、どんなことが分かってきたのだろうか。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.