発売から3カ月 新型クラウンは売れているのか?:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/3 ページ)
今年の7月に発表された新型クラウン。この秋からは、第一弾となる「クラウン(クロスオーバー)」の販売が開始されました。どれだけ売れているのでしょうか?
クラウンの販売台数の伸長に必要なこと
これは微妙な数字と言えるのではないでしょうか。まず、新型クラウンは4車種あるということで、従来の1モデルではなく4モデル合計が総数となります。目標3200台の4倍であれば、00年代の先代、先々代を越えて、90年代レベルの復活となります。
ただし、約1887台では、4倍になって約7544台。ようやく先代や先々代をちょっと超えるという数字です。目標は悪くないけれど、実数が足りない。それが発売後3カ月の成績と言えるでしょう。
そんな新型クラウンの販売の状況を、都心のある販売店で聞いてみました。すると「『受注はある』けれど、『盛り上がっているわけではない』」と言います。その理由は「納期が未定である」ことと、「4車種がそろってから考えたい」からだとか。
トヨタの公式Webサイトには「工場出荷時期目処のご案内」というページがあります。そこでクラウンの項目を見ると「詳しくは販売店にお問い合わせください(12月13日時点)」と表示されます。納車時期の記載がある車種で最長は「6カ月以上」とありますから、クラウンは、それ以上の時間が必要であることが予想されます。
確かに、いつ納車されるのか未定では買おうという気にはなりません。また、バリエーションがあれば見比べたいというのも、消費者としては正直な気持ちです。
そして、トヨタが発表している、月ごとの「生産計画について」を見ると興味深い記載があります。クラウンの生産を担うのは、元町工場の第1ラインと堤工場の第2ラインです。それが9月に4日間、10月に2日間、11月に6日間も稼働を停止していました。コロナ禍によるサプライチェーンの混乱、半導体不足が新型クラウンの生産を直撃。新型車としてのスタートダッシュに悪影響を及ぼしてしまったのです。
クラウンの販売が、目標に未達だったのは、クルマどうのこうのというわけではなく、発売されるタイミングが最悪だったということでしょう。クラウンの販売台数の伸長は、生産体制の回復が先ということ。来年に期待しましょう。
筆者プロフィール:鈴木ケンイチ
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
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