「便利」でもなく「楽しく」もない、そんなローカル鉄道はいらない:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/7 ページ)
12月中旬、日本共産党は提言「全国の鉄道網を維持・活性化し、未来に引き継ぐために」を発表した。鉄道ファンとしてはとても心強い話だが、内容では「活性化」に触れていない。残せば地域が活性化すると考えているなら無責任だ。問われるべきは「鉄道を維持したらどういう未来が待っているか」なのだ。
「鉄道が良い」という地域には「覚悟」がある
それでも鉄道を選択した地域はある。いくつか例を挙げてみよう。
- 富山地方鉄道富山港線
旧富山ライトレール。その前はJR富山港線だった。ローカル線だったJR富山港線を第三セクターが引き継ぎ、LRT路線に改造した。駅と電車の低床化、駅の増設、運行本数の増大、主要駅から乗り換えられるフィーダーバス路線も整備し、運賃体系を整えた。
その結果として、小さな車両ながら都市鉄道並みの混雑度になるほど利用者が増えて、全国の路面電車のLRT化の手本となった。開業からしばらくして私が乗ったときは「電車があるから富山駅の繁華街に飲みに行く」という乗客が多かった。北陸新幹線開通による富山駅高架化によって、駅の南側の富山地方鉄道に吸収され、市内の鉄道網のひとつとなった。「鉄道を便利に」という典型といえる。
- ひたちなか海浜鉄道
赤字路線の旧茨城交通港線を第三セクター化した。公募社長がまず手がけたことは終列車の繰り下げ。上野発22時台のJR特急に接続させて、都内の夜の飲み会に参加できるようになった。沿線には日立の工場があり社員の自宅もある。日立本社と遅くまで打ち合わせができるようになった。次に通勤通学輸送の増発に着手。単線ながら行き違いできる駅を増やす、新駅を設置するなど、自治体支援の元で攻めの投資を実施し黒字化。さらに約3キロ先の国営ひたち海浜公園への延伸が決まった。便利にすれば鉄道を再生できるというお手本だ。
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