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「便利」でもなく「楽しく」もない、そんなローカル鉄道はいらない:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/7 ページ)
12月中旬、日本共産党は提言「全国の鉄道網を維持・活性化し、未来に引き継ぐために」を発表した。鉄道ファンとしてはとても心強い話だが、内容では「活性化」に触れていない。残せば地域が活性化すると考えているなら無責任だ。問われるべきは「鉄道を維持したらどういう未来が待っているか」なのだ。
- JR只見線
11年の豪雨被害で鉄橋が流され一部区間が不通になる。JR東日本はバス転換を提案するも、沿線自治体と福島県が「地域の観光需要喚起のために必要」と判断し、上下分離、JR東日本の負担を最小にして復旧を決断。「全列車が満員でも赤字」という状況にもかかわらず支援している。22年10月に復旧し、紅葉シーズンの休日は増便、増結が必要なほどにぎわった。鉄道で地域を楽しく、という方向性だ。
- JR木次線
JR西日本の路線別平均通過人員で最下位が大糸線。次が木次線。沿線自治体は09年から観光列車「奥出雲おろち号」の費用を負担している。16年に前身の簸上(ひかみ)鉄道から開業100周年、翌年の全通90周年ごろから活性化の気運が高まり、利用促進協議会や自治体の観光部署、住民団体によるイベント、観光PRを実施。「地域に必要になること」だけではなく、「観光集客によってJR西日本の集客に貢献すること」などを目指す。予断を許さない状況ではあるが、JR西日本と連携を深めており、廃線論議は起きていない。
貨物列車や特急列車が走る線区はJR維持。輸送密度1000人未満、かつピーク時500人未満を目安に、鉄道と他の交通モードの最適解を探す(出典:国土交通省、鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会について)
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