東京モーターショーはどうあるべきか トヨタ社長が憂う日本の未来:高根英幸 「クルマのミライ」(6/6 ページ)
2023年の秋、4年ぶりに東京モーターショーが開催される。リーマンショックをきっかけにモーターショーの活気が失われつつあるが、どうすれば“復活”するだろうか。
日本ならではの強みを凝縮したモビリティショーへ
ただ見せるだけのショーでは、IT環境が充実した今日、観客を呼び込むのは難しい。日本はアニメやゲーム文化もレベルが高いのだから、それらも取り入れれば独自の魅力となることは間違いない。
もちろんモビリティと称しているのだから、クルマだけではなくバスや電車、路面電車や空飛ぶクルマ(筆者は普及は非現実的と思っているが)、航空機や船舶も出展してもいいはずだ。そして実車は合成燃料や再生可能エネルギーによる発電を駆使して、カーボンニュートラルを実現してほしい。
また高齢ドライバー対策にもTMSは利用できると思う。高齢ドライバーだけでなくドライバー全層に運転能力を維持することの重要さや維持のための情報発信も行なっていくのだ。
予算が足りない、というのであれば財務省が借りている自賠責保険料の6000億円から捻出してもらうのはどうだろう。金利分として考えても結構な金額を負担してもらってもいいはずだ。国から補助金を支給してもいい。それくらいTMSは国の産業やドライバー(未来のドライバーや助手席の乗員も含む)にとって、重要なイベントと言える。
前回のTMSは会場周辺の施設も利用し、無料開放エリアでもクルマを展示して、お台場エリアで広く開催された。しかし単に見せるだけ、という感覚の展示が圧倒的に多かった。これからは試乗やアトラクションをもっと増やし、バーチャルでも新しいモビリティの楽しさを疑似体験し、リアルでクルマを操れる、そんなモーターショーに発展することを、ほぼ半世紀通うイチファンとしても希望したい。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。
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