2015年7月27日以前の記事
検索
連載

「運輸連合」「交通税」とは何か 日本で定着させるために必要なこと杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/10 ページ)

国土交通省の「交通政策審議会 交通体系分科会 地域公共交通部会」は1月17日、「中間とりまとめ(素案)」を公開した。「関係者で合意した再構築方針に基づき、鉄道の維持と利便性確保」とあり、地方ローカル鉄道の維持に消極的な国も、地方ローカル鉄道を完全否定しているわけではないとわかる。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

 22年7月の「提言」によると「廃止ありき、存続ありき、といった前提を置かずに協議する枠組み」として、特定線区再構築協議会を設置すべき、とある。設置の条件として「輸送密度1000人/日」が示された。これが「1000人/日で存廃論議開始」と報じられ、前提を置かずと明記したにもかかわらず「路線廃止の取り組み」と誤解されてしまった。

 その誤解のまま「関連法令の改正案が国会に提出」と聞けば、「いよいよ国による鉄道存廃論議が加速する」と受け止めるだろうし「地方ローカル鉄道の廃止が進む」と危惧したくなるだろう。誤解であるが、誤解されるだけの状況証拠はある。

 大前提として、国は地方ローカル鉄道の維持には消極的だ。それは13年(平成25年)に施行した「交通政策基本法」でも読み取れるし、この法律に基づいてまとめられる「交通政策白書」でも明らかだ。

 法の趣旨である「効率的かつ利便性の高い地域公共交通の実現」の「効率的」は、「利用者1人当たりの輸送コストが最小になる選択をせよ」である。輸送容量が多く、道路交通に対して速度の高い鉄道は、都市においては「効率的」だ。しかし、費用が大きく乗客が少ない地方ローカル線は「効率的ではない」となる。

 国や鉄道事業者が国民に保障すべきサービスは「交通」であり、「鉄道」ではない。「公共インフラだから鉄道も国がやるべき」と声高に主張するだけでは話が進まない。

 国は完全に地方ローカル鉄道を否定するわけではない。それが中間とりまとめの「関係者で合意した再構築方針に基づき、鉄道の維持と利便性確保」であり、国会へ提出する法案に盛り込まれる。

 特定線区再構築協議会は鉄道廃止論議の場だけではない。国と鉄道事業者の廃止意向に対し、自治体の覚悟を示して、鉄道廃止を覆すチャンスでもある。


「交通政策審議会 交通体系分科会 地域公共交通部会」は06年に発足。これまでに何度か「中間とりまとめ」を発表し、法案提出に貢献してきた(出典:国土交通省、交通政策審議会 交通体系分科会 地域公共交通部会 中間とりまとめ(素案)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る