クックCEO、岸田総理に「iPhoneのサイドローディング問題」を直談判 なぜ日本の囲い込みに出たのか?:世界を読み解くニュース・サロン(2/3 ページ)
アップルのティム・クックCEOが2022年12月に来日した。「サイドローディング規制」について岸田総理に直談判したわけだが、どういった狙いがあるのだろうか?
クック氏来日の狙い
アップルの目線の先には日本政府があった。これらのアピールは、日本政府に対するものに他ならないのである。
そこで鍵となるのが、先に触れたサイドローディングだ。サイドローディングとは、正規アプリストア以外からアプリをダウンロードすることを指す。正規ストア(iPhone用ならApp Store、Android端末用ならGoogle Playがそれに当たる)ではアプリの安全性などを審査しているのだが、Android端末の場合は、無審査のアプリを正規ストア以外で配信できる。つまり、サイドローディングが、ある程度認められていた。
【訂正:2023年1月26日午前12時29分 初出で「iPhone用ならApp Store、Android端末用ならGoogle Playが正規ストアに当たる。」と記載しておりましたが訂正いたします。】
ところが、アップルはずっとサイドローディングを許可してこなかった。それによって、iPhoneは他のスマホと比べて断然、安全なスマホであると信頼されてきた。
先日、筆者が政府関係者やサイバーセキュリティ企業関係者などと話をしている時に、クック氏の来日の話になった。そこで一致した意見は、「クック氏の来日から政府内でもサイドローディングが話題になっている。セキュリティ関係者としては、サイドローディングは決して許してはいけないと思う」というものだった。彼らは、iPhoneが安全なスマホである大きな理由の一つが、サイドローディング制限にあると分析している。
上記の考えは、セキュリティ観点では正しいかもしれないが、市場からは歓迎されていない。iPhone用アプリを展開する場合、現在可能な手段はApp Storeに申請し、アップルの審査をパスする必要がある。しかしアップルが登録審査を厳しくコントロールしていることが、独占禁止法に違反するのではないかとの批判も世界各地で議論になっている。App Store登録時に徴収する15〜30%の手数料もアップルが独断で決めており、アプリ開発者の利益を阻害しているとの指摘もある。
そんなこともあって、日本でも、内閣官房が実施する「デジタル市場競争会議」で独禁法に絡んだ議論が続けられてきた。サイドローディング制限を禁止するアップルにとって不利な流れになりつつあった。
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