東急は上げて、北総は下げて、京急は上げて下げて 鉄道会社の運賃には“意味”がある:やはり、仕方がないのか(2/5 ページ)
値上げに踏み切る鉄道事業者も増えているが、物価上昇だけが理由ではない。各事業者の狙いとは。
運賃激安事業者の値上げ
東急電鉄は、3月18日に値上げを実施する。初乗り運賃が交通系ICカードで126円のところ、140円に。最長距離の51キロから56キロまでは、471円から531円に。均一運賃の世田谷線は147円から160円になる。
東急電鉄は運賃の水準が安すぎることで知られている。JRが147円(交通系ICカード、以下同じ)、京急電鉄が136円、小田急電鉄が126円、京王電鉄が126円、西武鉄道が147円、東武鉄道が147円、京成電鉄が136円、相模鉄道が147円、東京メトロが168円、都営地下鉄が178円となっており、小田急や京王と並ぶ低い運賃水準だ。
ちなみに初乗り運賃が低く、遠距離でも運賃の低い東急、小田急、京王は、沿線住民の所得水準が高く、不動産価格も高いエリアである。そんな地域を走る路線の運賃が、地価など安いエリアを走る路線の運賃よりも安い状況にある。これらの私鉄は利用者も多く、その分、運賃を安く設定することも可能だったと思う。
だがコロナ禍で東急電鉄は厳しい状況になった。関東圏私鉄では最も充実したホームドアやエレベーター、障がい者対応トイレを備えた東急電鉄は、多くの利用者がいたことで駅設備などの充実を図っていたが、それがこのままでは難しくなってきている。かといって、そのあたりをおろそかにすることは、沿線住民により良い鉄道サービスを提供する東急電鉄の基本方針から逸脱する。
東急沿線の住民は、コロナ禍で普及したテレワークが可能な職種の人たちが多く、それゆえにほかの私鉄やJRよりも利用者が減少している。22年に運賃改定を発表した際の資料によると、東急電鉄は定期券による運賃収入が31.5%、輸送人員が29.2%減少している。関東大手民鉄では最大幅の減収、減人員だ。参考までにJR東日本は、コロナ禍直後の21年3月で関東圏の輸送人キロ(輸送人員×乗車距離)が定期券利用者で前年比73.9%減、22年3月では同98.2%となっている。
特に定期券利用者の減少が大きい。よって東急電鉄は、自社の利用者により良いサービスを提供することで、値上げを図る。
ちなみに、低い運賃で知られる京王電鉄も、運賃値上げを検討している状況にある。
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