W杯で赤字のABEMA、巨額投資をどう回収? 「次の一手」を予想してみた:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(7/7 ページ)
昨年末のW杯では、全試合無料生中継を実施したサイバーエージェントの「ABEMA」に注目が集まりました。巨額を投じたABEMAのメディア事業は現状なお赤字ですが、今回の投資によって2つの成長余地が生まれたと筆者は考えます。
ゲーム事業は自社IPでコンテンツを作れる開発力が強み
続いて減収減益となっていたゲーム事業を見ていくと、周年記念のイベント前だったこともあり、売り上げ利益ともにウマ娘のヒット前に近い水準まで下落してきています。今回の決算発表以後の1月は順調な滑り出しだと同社は言及しており、ゲーム事業の業績は下げ止まるでしょうか。
ウマ娘に関しては、クロスメディア展開を通じて10年続くIPにしていくといいます。ウマ娘のTVアニメの第3期も制作が発表されました。他社のゲームの動向を見ても、テレビアニメの人気が出るとゲームも盛り上がります。
また、サイバーエージェントのゲーム事業の大きな強みは、自社IPで人気コンテンツを作れる開発力があることです。多くのゲーム制作を行っている企業は自社IPではヒットは出せず、有名なIPを利用したり単発で自社IPのヒットが出ても続かない場合が多いです。
しかし、サイバーエージェントはウマ娘の他、シャドウバースやグランブルーファンタジーなどの自社IPの人気コンテンツをこれまでも作成してきました。当然次の自社IPタイトルの構想もあるでしょうから、ウマ娘の人気が落ちてきたとしても次の期待ができるというのは強みでしょう。
とはいえ直近ではアニメの人気によるゲーム事業の復調というのが最も注目だと考えられます。
まとめ
サイバーエージェントではABEMAは大きく伸びているものの、W杯での投資や広告事業でも景気の影響や先行投資による人員増加、ゲーム事業はウマ娘の反動などがあり減収で赤字転落となっていました。
とはいえ広告事業やゲーム事業では安定して大きな利益は出ていますし、W杯の影響がきちんと業績に表れてくるのは時期以降ではABEMAの利益面も本格的に改善をみせるでしょうから、通期の業績としては大きな回復が見られるでしょう。
まずは次回のABEMAの業績が最も注目です。
筆者プロフィール:妄想する決算
決算は現場にある1次情報とメディアで出てくる2次情報の中間1.5次情報です。周りと違った現場により近い情報が得られる経済ニュースでもあります。上場企業に詳しくなりながら、決算書も読めるようになっていく連載です。
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