『アイマス』責任者が語るコンテンツの長期化戦略 新規事業で最も大切なこと:600億円超の推定売上(3/3 ページ)
『アイドルマスター』がバンダイナムコを代表する人気コンテンツであり続ける秘訣(ひけつ)は何か。どのようにユーザー層をアップデートしているのか。『アイマス』プロジェクトを統括するバンダイナムコエンターテインメントの波多野公士ゼネラルマネージャーに聞いた。
ファン層の世代交代を図る狙い
――確かに、初代『アイマス』に20代で出会った人は、17年がたち、今や40代になっている人も珍しくありません。リリース時の若者にターゲットを絞ることで、ファン層の世代交代を図る狙いですね。
そうですね。例えばシリーズ最新の『シャイニーカラーズ』では、物語に深みがあるコンセプトのほうが今の若者に刺さるのでは、という仮説のもとに展開しています。
――リリース時の若者をターゲットにすることによって、コンテンツの若返りによる長期化が期待できます。ただ購買力の低下を招く面もあると思います。
確かにそういう懸念もあります。ただ、若い世代の方に受け入れてもらい、展開を続けていくうちに、その問題は解決していくのかなと考えています。まずは新しいファン層を開拓してから、考えていけばいいと思いますね。
――『アイマス』シリーズを展開したこの17年間で、カスタマーの変化を、どう捉えていますか。
エンタメの世界は昔から「好き」という気持ちが購買や消費につながるところがあります。それが時代とともに尖ってきたなと思っています。以前はこのキャラクターが好きだから、グッズを買って応援するだけだったのが、次第にライブに通えるようになりました。そして今では動画配信プラットフォーム上で、「スパチャ」のように、自分の好きなキャラクターに金銭的報酬を提供できるようになっています。
――確かに、自分の好きなキャラクターに金銭的報酬を与えて応援するのは、一昔前だと考えられないようなことでした。
キャラクターとの距離が近くなった分、ピュアになってきましたよね。好きだから応援したい、その気持ちに対して自分の時間を使う。それが社会にも受け入れられるようになったと思います。
――18年の『シャイニーカラーズ』から5年。23年の今年は春からVチューバー展開のようにライバー(配信者)活動を軸に据えた『ヴイアライヴ』のリリースも控えています。
『ヴイアライヴ』も若者をターゲットにして、そこから逆算して作ろうとしている点では変わりません。ただ、『ヴイアライヴ』はせっかく双方向のストリーミングという形をとっているので、そういうコンセプトの部分もファンである「プロデューサー」の方に委ねて創り上げていくのがいいのではないかといま議論している感じですね。
――枠組みの部分から顧客に委ねるあたり、ユーザー間でコンテンツを共有して運営するWeb3.0の考え方に近いと言えそうですね。『ヴイアライヴ』が「3.0 VISION」の一つの象徴と言えそうなのですが、ここに来て「2nd VISION」から「3.0 VISION」に大きく前に進めようとしたのはなぜなのでしょうか。
「2nd VISION」では複数のメディアでコンテンツを積極的に展開していく方向になりました。それから10年以上が経ち、リアルタイムの3D技術や動画配信技術の向上など、それまでできなかったことができるようになってきました。
そこで、2月11日と12日に開催される東京ドームでの5ブランド合同ライブを「2nd VISION」の一つの到達点として、そこから新たな「3.0 VISION」という大きな目標を立てていけると考えています。
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