「サイバー攻撃対策」が、政府・企業の最重要課題になり得るワケ:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
2023年、サイバー攻撃対策が政府や民間の最重要課題の一つとなることは間違いないだろう。サイバーセキュリティを専門に扱う筆者が、そのワケを解説。
2023年、もう一つのリスク
今年はKELAのような新しいセキュリティソリューションの活躍もあり、サイバー攻撃リスクをより実感する年になるだろう。加えて、もう一つリスクとして注視しておく必要がある。昨年から続く、ロシアのウクライナ侵攻だ。
筆者は22年末、戦闘下にあるウクライナでのサイバー攻撃対策について、ウクライナの国家特殊通信・情報保護局(SSSCIP)のビクター・ゾーラ副局長に直接話を聞いた。
ゾーラ氏は、対中関係や北朝鮮の核問題など日本を取り巻く国際的な脅威のほかに、実際に中国や北朝鮮が日本にサイバー攻撃を仕掛けている事実を踏まえ、以下のようにコメントしている。
「ウクライナ政府は、戦前(ロシアによる侵攻前)からサイバーセキュリティの一翼を担うビジネス界との協力関係の強化に絶えず取り組んできた。22年1月24日にウクライナ侵攻が始まって以降、その取り組みはさらに強化されている。サイバー戦争の活動期に、IT産業界や国際的な大手企業などとの協力関係を深めることの重要性を実感した」
つまり、混乱時こそ国家を支える経済活動を妨害されないように、政府と企業が密に連携し、サイバー攻撃対策を行う必要があるということだ。
ウクライナ侵攻の話は日本にとっても決してひとごとではない。隣国の動向や友好関係にある台湾の有事などサイバーリスクに発展する可能性を秘めている事柄は少なくない。サイバー攻撃を受けた際に、サイバー攻撃を受けた際、国家と企業がスムーズに連携するために、企業にも対応が求められる一年になるだろう。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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