少子化でも1000億円市場の「学校制服」 大手4社がシェア7割の“特異”な背景:磯部孝のアパレル最前線(3/3 ページ)
新入生を持つ保護者にとって、2月は制服を買う時期。少子化の昨今でも、制服市場は1000億円規模だという。一方で、シェアは大手4社が7割を占めており、“寡占化”が進んでいる。
例えば、「最低でも3年間の耐久性がある品質」が求められるし、「学校単位の小ロット発注」「購入後の成長に伴うサイズ直しや補修サービス」「受注以降、入学式までに間に合わせなければならない確実な生産オペレーション」「在学中のリピート・オーダーや転入生への供給の為の在庫リスク」――なども挙げられる。
市場原理がなかなか働かない理由には「販売業者」という中間業者の存在も挙げられる。制服メーカーから卸される販売業者は、地元洋品店、スポーツ用品店、学生服専門店、量販店、百貨店といった店が対応している。既製品一般市場は、メーカー直販、工場直販、製造小売り――と、中間業者を省いたビジネスモデルが台頭してきているが、制服市場はそうなっていない。
先の報告書によると、直近5年度における一つの学校が案内する指定販売店等の増減は「変わらない」 と回答する学校が全体の82.7%を占めている。案内する指定販売店を定期的に見直している学校もあるようだが、一部にとどまっている。
背景には、制服に関する仕様・メーカー・販売業者の決定権を持っているのが学校で、費用負担は保護者という特異な構造が挙げられるだろう。多くの保護者は学校のいうままに従うしかない現状があるため、なかなか是正されにくいのだ。
一方で、少しずつではあるが変化も生まれている。先に触れたような、制服を軸に学校を選ぶトレンドだけでなく、低価格化に関する取り組みなどもあるようだ。例えば先の公正取引委員会の報告書によると、自治体単位で制服仕様を共通化することで、スケールメリットを生かした低価格化などが進められている。報告書では「少なくとも7つの市」で共通化が行われているという。
これから、今まで以上に少子化の影響に大きく見舞われるはずの制服市場。さらに低価格化・多様化のニーズにも対応しなければいけないことを考えると、課題は山積している。旧態依然とした業界構造の変革が求められている
著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
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