大手の賃上げで広がる格差 人材流出に苦しむ中小企業、採用難にどう対応する?:10人採用したが、10人離職も(1/3 ページ)
物価高に伴い、賃上げを実施する大手企業が増えてきました。賃上げする体力のない中小企業はどう対抗すればいいのでしょうか?
賃金構造基本統計調査によると日本における男性労働者(短時間労働者を除く)の賃金は2001年をピークに横ばいが続いています。政府は欧米並みの賃金上昇を目指し最低賃金の見直し、企業へのベースアップの要請、同一労働同一賃金の法制化などに取り組んでいますが、なかなか成果につながっていないのが実態です。
しかし昨今の急激な物価上昇によって、この状況が一変する気配があります。ファーストリテイリングは物価高への対処や人材獲得を目的に、3月から国内従業員の年収を最大4割引き上げ、初任給も25万5000円から30万円に引き上げると発表しました。また、他の大手企業でもこの流れに追随する動きがみられます。
ただ中小企業にとって賃金アップはなかなか難しいのが現状です。それは、物価上昇が需要拡大による好景気を背景にしたものでなく、生産コストの上昇によるものだからです。
これにより大手と中小企業の賃金格差はますます広がり、労働者の大手志向はさらに強いものとなるでしょう。そもそも日本国内の労働力人口は右肩下がりです。みずほ総合研究所は25年の6149万人から35年には5587万人へと10%近く減少し、人数にして562万人減少すると推定を出しています。
562万人と言われてもピンとこないかもしれませんが、総務省が発表した人口推計(21年10月1日時点)によると北海道が518.3万人、兵庫県が543.2万人、福岡県が512.4万人ですから、そのインパクトの大きさが分かります。
よって、大手との賃金格差は人材確保という点で、中小企業にかなり深刻な課題を引き起こすといえるでしょう。
関連記事
- 定年退職後に嘱託社員として再雇用 賃金50%カットの妥当性は?
少子高齢化に伴い、高齢者活躍の土壌を整える必要性に迫られる日本。定年は60歳が一般的だが、65歳までの雇用維持、70歳までの就業機会の確保が努力義務となっている。定年退職後に嘱託社員として復帰した社員への賃金設定はいくらが妥当なのか? 社会保険労務士が解説。 - 40代正社員の平均年収が下がっている意外な理由とは? 24年間で約60万円も減少
国税庁の調査によると、1997年と2021年を比べたところ、40代正社員の平均年収が60万円ほど減少していることが分かった。なぜなのか? - 3つのよくある残業対策、小手先の対応になっていないか? その効果と落とし穴
経営において、コストの適正管理は極めて重要です。コストの大部分を占める人件費をどう調整すべきか? 今回は、よくある残業代対策とその課題についてご紹介していきます。 - 「部下に退職代行を使われた」 無理やり本人を出勤させることはできるのか?
退職の申し出をする際に退職代行サービスを利用する人が増えてきたという意見を耳にする。退職代行会社から連絡が来ても本人を出勤させることはできる? 引き継ぎはどうすべき? などの疑問を社労士が解説。 - 問題行動の多い社員のシフトを無断でカット 賃金補償の義務は生じる?
シフト制の揉め事の一つであるシフトカット、労働契約書に「出勤日は会社が作成するシフトによる」と定めていれば、理屈上シフトカットは可能。しかし、状況によっては会社に賃金補償の義務が生じるケースもあるという。社会保険労務士が判例を基に解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.