楽天モバイル、無料プランを廃止しても「赤字拡大」のワケ:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(1/8 ページ)
楽天モバイルの投資で苦しい状況にあり、無料プランを廃止したり、社員には契約ノルマが課せられているという報道もあった楽天。それでも赤字が拡大しているのはなぜなのでしょうか。
決算書から日本経済を読み解く本連載。今回は楽天を取り上げます。
同社は楽天モバイルの投資で苦しい状況にあり、無料プランを廃止したり、社員には契約ノルマが課せられているという報道もありました。また、楽天モバイル店舗の撤退が続いていることも話題になりました。
モバイル事業以降、赤字が拡大 投資が負担に
今回はそんな楽天がどのような状況にいるのかをモバイル事業を中心に見ていきましょう。
ここ数年の売り上げは大きな成長を続ける一方で、楽天モバイルが事業を開始した2019年10月以降では、利益面は大きな赤字が続いています。楽天モバイルへの投資の負担の大きさが分かります。
売り上げは増加、しかし赤字は拡大
続いて22年12月期の通期の業績から、楽天の現状を見ていきます。
売上高は前年同期比14.6%増の1兆9278億円に。営業利益は赤字が拡大し、2126億円の赤字から4078億円の赤字へ。純利益も1338億円の赤字から3728億円の赤字へと、売り上げは増加しつつも赤字幅は拡大しており、利益面では苦しい状況が続いています。
直近の第4四半期単体(22年10〜12月)の業績を見ていくと、売上高は14.6%増、営業利益は864億円の赤字から768億円の赤字と、直近においても増収は続きつつも大きな赤字が続いています。しかし赤字幅は縮小し、一定の収益性の改善が進んでいます。
大きな赤字が続いている要因は、ご存じの通り楽天モバイルへの投資です。主力事業の4Q単体の業績を見ていくと、
- 国内EC:売り上げ11.5%増 営業利益21.8%増(290億円)
- フィンテック:売り上げ7.7%増 営業利益16.4%増(243億円)
- モバイル:売り上げ75.2%増 営業利益1187億円の赤字→1126億円の赤字
となっています。
主力の国内ECやフィンテックは増収増益です。主要なKPIを見てもECの流通総額は12.3%増、楽天カードの取扱高は25.8%増、楽天証券の口座数は21.1%増、銀行の口座数は13.3%増と、楽天モバイルを除けば大きな成長が続いています。
大きな赤字を記録している楽天モバイルは、同社の今後の業績を考える上で大きなファクターです。
そもそも、楽天はなぜ格安のモバイル事業を始めたのでしょうか。
関連記事
- スシロー、おとり広告で「信用失墜」し客離れ──それだけではない業績悪化のワケ
最近のスシローといえば、おとり広告の問題で景品表示法に係る措置命令を受けてしまった件は記憶に新しいことでしょう。こういった問題が起きるとどのような影響があるのかを「減損損失」という視点から見ていきます。 - 社長は「トヨダ」氏なのに、社名はなぜ「トヨタ」? “TOYODA”エンブレムが幻になった3つの理由
日本の自動車産業をけん引するトヨタ自動車。しかし、同社の豊田社長の名字の読み方は「トヨダ」と濁点が付く。なぜ、創業家の名字と社名が異なるのか? 経緯を調べると、そこには3つの理由があった。 - 「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。 - ファミマに吸収合併されたコンビニはどれ? 「ポプラ」「スリーエフ」「am/pm」
ファミリーマートの店舗を目にしたとき、「そういえば、ここは数年前まで別のコンビニじゃなかったっけ?」と記憶をたどったことはないだろうか。同社はこれまで、複数の企業を吸収合併してきた歴史を持つ。 - 「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.