「獺祭」蔵元が賃金と生産性をアップできたワケ 「賃上げブーム」との決定的な違いとは:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
大企業で賃上げの報道が続いている。しかし、給与が上がるのは大手正社員のみ。物価が高騰しているにもかかわらず、大多数を占める中小企業の社員、特に中高年層の社員の給与は一向に増える見込みがありません。そんな中、経営層は、どんな意識を持って経営すべきなのか。ヒントとして獺祭の事例を紹介します。
中央値が激減! 日本の賃金は下がっていた
そもそも日本は賃金が低すぎました。
ご承知の通り、バブル崩壊以後、日本は先進国で唯一賃金が上がらなかった国であり、経済協力開発機構(OECD)加盟国の2020年の年間平均賃金水準で見ると、日本は35カ国中22位。最下位グループです。
しかも、実際には「上がらない」どころか「下がってた」ことが内閣府の分析で明かされています。
ご覧の通りバブル崩壊後の1994年から2019年までの25年間で、年収の中央値は550万円から372万円へと著しく減少しています。
年齢別では、“働き盛り”である30代後半〜50代前半までの世帯の年収が激減していました。最も減少幅が大きかった45〜54歳では、1994年の826万円から、195万円も下がっていたのです。
年収中央値の変化(1994→2019年)
25〜34歳:470万→429万円(▲41万円)
35〜44歳:657万→565万円(▲92万円)
45〜54歳:826万→631万円(▲195万円)
55〜64歳:560万→532万円(▲28万円)
65歳以上: 50万→38万円(▲12万円)
しかも、氷河期世代を含む「35〜44歳の単身世帯」の所得のボリュームゾーンは、94年の500万円台から300万円台へと、200万円ほども減少していました。
こういった状況を鑑みれば、賃上げして当たり前だし、コロナ禍で欧米諸国が大幅な賃上げに踏み切ったわけですから、世界基準には程遠いといわざるを得ません。物価上昇率からみれば、実質賃金は大幅に目減りすることになるとの指摘もあります。
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