「昭和のクルマ」が人気、 日本のモノづくりは再び強くなるのか:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
「旧車」が盛り上がっている。さまざまなイベントに登場するだけでなく、取引価格も上昇傾向にあるのだ。それにしてもなぜ旧車が注目されているのか。背景にあるのは……。
旧車の魅力
こうした余裕を無駄と捉えて効率化を図ってきたのがクルマをはじめとする工業製品の進化だが、効率やコストを優先したクルマを「味気ない」と感じる人は少なくない。それはクルマを単なる移動の手段ではなく、趣味の所有物と考えれば当然のことだろう。一つの製品として見たとき、効率やコストダウンは実用性やコスパ以外の評価軸で見れば魅力の薄いクルマになってしまうのは否めない。
しかも省燃費や高い衝突安全性、低価格を実現するために無駄を削ぎ落としている現代のクルマのエンジンは、モディファイしようとしても、機械的な強度や耐久性なども昔のエンジンほど余裕がない。
設計時の安全率は、実際に製品になったときの個体差や使われ方をカバーするための余裕でもあるわけだが、こうした部分は無駄と判断されて削ぎ落とされるのだ。しかしいざ製品をオーバーホールして長く使おうとしたときやモディファイしてさらに性能を引き出そうとする場合には、こうした無駄がマージン(余白)としてポテンシャルとなり得るのである。
そうしたマージンがもつポテンシャルを引き出して、途方もないエンジンパワーを発生させることができるのも、かつての旧車の魅力だ。
しかしながら、旧車には工業製品ならではの問題があり、それをどう克服していくかが、旧車オーナーには難題として立ちはだかってきた。寿命を迎えたパーツの供給問題だけでなく、腐食や塗装の劣化などボディの損傷を補修することも挙げられる。
以前は鉄板からボディパネルを叩き出してつくり上げる腕利きの板金職人がゴロゴロいたが、クルマの修理技術の複雑化・高度化がそうした技術を発揮する機会を減らし、職人の高齢化もあって近年はめっきり少なくなっている。
旧車専門店では、これまで取引のあった熟練職人の腕に頼ってきたが、職人たちの引退が相次いでおり、修復作業の人手を確保するのも難しく、修復の依頼から完成までが長期化している。
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