「昭和のクルマ」が人気、 日本のモノづくりは再び強くなるのか:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
「旧車」が盛り上がっている。さまざまなイベントに登場するだけでなく、取引価格も上昇傾向にあるのだ。それにしてもなぜ旧車が注目されているのか。背景にあるのは……。
復活する車種も
部品供給に関しては、トヨタやホンダは趣味性の強い特定のモデルはかなり長く供給することもあるが、日産、マツダ、三菱などは消耗品以外の部品は15年もすればほとんどが廃番となる。しかし最近、部品の供給が終了している旧車の人気モデルに対して、自動車メーカーが部品を再販するケースが増えている。
家電製品などは法律で義務付けられている販売終了後6年を過ぎれば、部品を調達することが難しくなって、修理が困難となる。耐久消費財としては一般的であるが、より高額で趣味性の強いクルマは長く乗られる傾向があるので、パーツの廃番で供給が停止されると維持するのが難しくなる。
そのためこれまで部品取り車を用意してコンディションの良い部品を選んで使う、デッドストック品を全国から探し出す、といった対策が一般的な方法だった。これはこれでマニアの楽しみ方とも言えたが、海外メーカーと比べると部品の確保に苦労する側面があった。しかし、ここにきて改善傾向にあるのだ。
最近、自動車メーカーからの部品供給とは一線を画した新たな部品供給のムーブメントが起きている。純正部品を供給してきたメーカーではなく、部品業者による製作だ。図面データや金型などを持っていない企業が部品を製作して供給するのは、日本の常識ではあり得なかった。
それを可能にしたのは、リバースエンジニアリングという技術だ。23年のノスタルジック2デイズでは、日産の伝統的エンジンL型のシリンダーヘッドを3DスキャンとCTスキャンによってデータ化し、鋳造型をつくり上げて再生産を可能とした企業も出展しており、この業界も急速にハイテク化した印象を受けた。
日産のL型エンジンのシリンダーヘッドを3DスキャンとCTスキャンにより完全データ化して、復刻したもの。実績のあるチューニングヘッドをベースとしており、組み付けただけでパフォーマンスアップを図れる。説明員は「他のエンジンのヘッドも復刻したいが、採算性も考えてなかなか社内でOKが出ない」と言っていた
といっても最新技術を駆使するばかりでなく、日本ならではのワザも発揮されている。石膏(せっこう)で実車から型を取り、修正を経て金型を製作してボディパネルを供給する業者まで登場しているのである。
持てる技術を全て駆使して旧車を支えようとしている姿に、旧車ビジネスの勢い、ユーザーだけでなく業者にも旧車への愛情や熱意を感じるのだ。
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