「指示待ち部下」は上司の責任 部下が「自ら動く」ための3つの条件(3/3 ページ)
本来、部下の成果が出ないのはマネージャーの責任です。部下が「自ら動く」ためには、何が必要でしょうか? 3つの条件があります。
自律:自律的に動くルール(=行動規範)を浸透させる
最後に「自律」です。これは、厳密にいうと「自律的に動くルールや仕組み作り」といえます。
カーレースに例えると、共感と最適挑戦がエンジン、成果がゴールだとすると、自律はコースに例えられます。人間誰しも自由は大事ですが、何もないまっさらな状態で「なんでもしていいよ!」と言われても困ってしまいます。自由に自分の意志をもって動くには、なにかしら動く上でのコースがあった方が素早くゴールにたどり着けます。
コースを形作るのに必要なのが「行動規範」や「マネジメントシステム」です。それが定着していくと「カルチャー」といえるかもしれません。日本には400万社の企業が存在しますが、それぞれの企業は、それぞれの理想とする行動規範があり、それは取り扱っている商材にも大きく関係しています。例えば、ビルを建設する企業は、ソフトウェアを開発する企業と比べて、構造的に人身事故が起きやすいといえます。となると、建設会社は「秩序 > 変化」となり、ソフトウェア会社は「変化 > 秩序」となります。無論、「秩序 > 変化」というソフトウェア会社もあるとは思いますが、何を企業にとって理想とするか、という憲法が企業ごとに違います。
レンガ積み職人の例でいくと、「うちはとにかく堅牢で安定した大聖堂を時間をかけてでもいいから創るのだ!」が理想なのか、「安全性は多少は犠牲にしても、これまでになかったような奇抜なあしらいの大聖堂を創るのだ!」が理想なのか、分かっていないと毎回親方に判断を仰ぐことになります。一人で放置されてしまうと、作業が滞ります。
さて、そういった憲法が、従業員に「提示」され「浸透」していると、メンバーそれぞれが自分で判断ができるようになります。そうなることで、マネジャーが逐一判断をくださなくもよくなり、リモート環境で相手の姿が見えなくても成果が上がりやすい組織になります。
行動規範を浸透させるのは、簡単ではありません。一番効果があるのは評価基準に入れることですが、その徹底でさえ、リソースの制約がある企業にとって簡単なことではありません。しかし、そういった「緊急性は低いが重要性が高い」タスクに取り組まないと、ずっとその場しのぎで走り続ける組織になってしまいます。
また、マネジメントシステムとは、「誰もが凡事徹底をして非凡な成果をあげられる」ようにするような仕組みのことです。例えば、一般的に仕事とは「目標設定」→「進捗管理」→「評価」のサイクルで成り立っています。この各ステップが徹底されていない(例えば、目標が曖昧なまま走っているなど)ことが、成果を出す上での障害になります。そこで、各ステップが徹底されるような仕組み化が重要です。例えば、四半期の頭にはしっかりとマネージャーと部下が一緒になって目標を設定し、それを毎週1-1の進捗管理をし、最後は一緒に評価をする、といったプロセスです。
以上、内的動機付けを生かして創造性を働かせ、リモートワークが普及した時代においても成果が出る組織作りについて説明してきました。共感、最適挑戦、そして自律、どれも理想的ではある一方で、実現したり、それを維持させたりするのは簡単ではありません。2023年は、ぜひチャレンジしてみていただければと思います。
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