働かないおじさんを“一掃”すると、若者が犠牲になる──なぜ?(1/3 ページ)
「働かないおじさん」について議論されるようになって久しいですが、なかなか改革が進まないのはなぜでしょうか。日本型雇用慣行における2つの理由があります。
「働かないおじさん」という言葉は、今やメディアで見ない日はないほど流行のコンテンツになっています。その語が指すところには論者によってブレがありますが、おおむね「十分とは言えない働きなのに分不相応な給与を受け取っている、一部の中高年層」といったところでしょう。
「働かないおじさん」について議論されるようになって久しいですが、なかなか改革が進まないのはなぜでしょうか。日本型雇用慣行における2つの理由があります。
「新卒一括採用」にメスを入れなければならない
日本の独特の雇用慣行の一つに新卒一括採用があります。在学中に採用選考を実施し、内定者を卒業後直ちに雇用することです。プロ野球のドラフト会議のように、現有戦力が足りていようといまいと関係なく新人を入れます。
多くの国々では、採用は基本的に欠員補充であり、職業経験がない学生をわざわざ採用しようとはしません。米国の場合は、新卒者でも就業経験なしでは雇用されません。このため学生は在学中にインターンとして働きます。
インターンにも採用選考があり、無給でありながら、卒業後に雇用してもらえるという保証はありません。その職種と関連が強い学部や学科を卒業していることも要求されます。例えば文学専攻の学生が銀行に就職するようなことは困難です。
対して日本では、通常はインターン経験も出身学部も不問です。入社後は見習い期間中も給料を払ってくれます。
育成期間は企業側にとって、本来は賃金を払うのではなく、授業料をもらわなければ割に合いません。このときの「貸し」を30歳代から40歳代のときに賃金以上の貢献を要求することによって回収します。
しかし社員側からみれば、職業人生の前半は貢献度以上の賃金をもらい、後半は貢献度未満の賃金しかもらえないというのでは、後半は苦痛でしかありません。そうならないように、職業人生の最終盤に再び貢献度以上の賃金をもらえる時期を設けます。このような仕組みを「長期決済型賃金」といます。従って定年間近の人が貢献度以上の賃金をもらえることには経済的な合理性があります。
関連記事
- スシロー、おとり広告で「信用失墜」し客離れ──それだけではない業績悪化のワケ
最近のスシローといえば、おとり広告の問題で景品表示法に係る措置命令を受けてしまった件は記憶に新しいことでしょう。こういった問題が起きるとどのような影響があるのかを「減損損失」という視点から見ていきます。 - 社長は「トヨダ」氏なのに、社名はなぜ「トヨタ」? “TOYODA”エンブレムが幻になった3つの理由
日本の自動車産業をけん引するトヨタ自動車。しかし、同社の豊田社長の名字の読み方は「トヨダ」と濁点が付く。なぜ、創業家の名字と社名が異なるのか? 経緯を調べると、そこには3つの理由があった。 - 「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。 - ファミマに吸収合併されたコンビニはどれ? 「ポプラ」「スリーエフ」「am/pm」
ファミリーマートの店舗を目にしたとき、「そういえば、ここは数年前まで別のコンビニじゃなかったっけ?」と記憶をたどったことはないだろうか。同社はこれまで、複数の企業を吸収合併してきた歴史を持つ。 - 「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.