春闘の効果、実は“ブラックボックス”──異例の「3.8%賃上げ」に本当に役立っている?:「春闘無用論」を考える(1/2 ページ)
2023年の春闘は3月15日に集中回答日を迎え、平均賃上げ率はこの時期の集計結果が残っている13年以降では最も高い3.80%でした。このまま推移すれば、歴史的な春闘になるかもしれません。ただし、高い賃上げ率が全て春闘の成果なのかどうかは分かりません。
2023年の春闘は3月15日に集中回答日を迎え、平均賃上げ率はこの時期の集計結果が残っている13年以降では最も高い3.80%でした。このまま推移すれば、歴史的な春闘になるかもしれません。
ただし、高い賃上げ率が全て春闘の成果なのかどうかは分かりません。
春闘はベアをめぐる交渉
春闘とは何かから整理します。正式な名称は「春季生活闘争」で、主要企業とその労働組合が労働条件をめぐって一斉に交渉することを言います。1955年に「8単産共闘」と称して始まりました。同時期に交渉することで、経営側に圧力をかける狙いがあります。
後述するように、春闘は賃金についてだけ交渉する場ではありません。しかし最も注目されるのはやはり賃上げです。
賃上げとは、定期昇給(定昇)とベースアップ(ベア)を合わせたものです。
賃上げ額(率)=定昇額(率)+ベア額(率)
定期昇給とは、個別の企業の就業規則や賃金規定で、方法や金額を定めた昇給のことです。仮に「賃金=年齢×1万円」という会社があるとします。その会社の定昇額は1万円です。定昇率は「1÷平均年齢×100」%です。
この場合、「賃金=年齢×1万円」という賃金決定の方法を「賃金ベース」と言います。これを「賃金=年齢×1万200円」というように全体を押し上げることを「ベースアップ」と言います(ただしベースアップは和製英語であり、本来の英語ではありません)。
定期昇給とベースアップを同時に行うと、31歳の人は定期昇給によって賃金が30万円から31万円に上がり、さらにベースアップによって31万円から31万6200円に上がります。結局、30万円から31万6200円へと1万6200円、率にして5.4%賃金が上がります。これがこの人にとっての賃上げ率(額)です。内訳は1万円(3.3%)が定期昇給で、6200円(2.1%)がベアです。こうした値を全社員で平均したものが平均賃上げ率(額)です(図2参照)。
定昇を行うことは労働契約上当然であり、労働組合はわざわざ要求したりしません。労働組合が要求するのはベアをいくらにするかです。春闘の賃上げの部分は、ベアをめぐる交渉です。
定昇率は賃金規定によって決まり、賃金規定は個別の企業が独自に定めているため、定昇率は企業によって異なります。しかし連合は例年、定期昇給が2%あることを前提にして要求方針を決めています。23年は5%を要求方針としていますが、内訳は定昇2%、ベア3%です。
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