甲子園の「ペッパーミル騒動」に批判の声 日本のネガティブイメージが経済に与えうる影響:世界を読み解くニュース・サロン(2/3 ページ)
センバツ高校野球に出場した高校球児の「ペッパーミル・パフォーマンス」が注意を受けた。このニュースは海外でも報じられ、批判コメントが数多く寄せられた。このようなネガティブイメージが日本経済にどのような影響を与えうるか、考察してみたい。
日本の高校野球の違和感
記事では「セントルイス・カージナルスのラーズ・ヌートバー外野手のペッパーミルのジェスチャーはWBCで話題だが、そのヌートバーがはしゃいだジェスチャーは日本で人気の高校野球トーナメントでは歓迎されないようだ」とし、「高校野球の決まりで、得点後に拳を握り締めるジェスチャーなど感情を出さないよう抑える傾向がある」と紹介されている。
批判的ではないものの、日本の高校野球が異様なことになっていると主張したい雰囲気を感じる。だからこそ、辛辣なコメントも多いのだろう。
この記事やコメントを見ると、そもそも何のためにセンバツ高校野球をやっているのか分からなくなってくる。もっと言えば、何のために野球をやっているのか、と。
日本の高校球児は、学校が終わった放課後に練習をする。強豪校であればあるほど厳しい練習を日々こなし、野球部独自の規律やルールに縛られながら活動する。部内でのいじめが問題になることがだってある。
なぜそんな思いをしてまで野球をするのか――それは野球が好きで楽しみたいからではないか。試合中に感情を出してはいけないとしたら、試合に負けて、悔しくて涙を流すのもやめさせないといけなくなる。ところが、敗北し涙するシーンは「美しいもの」として扱われることもあり、違和感を覚える。
高野連は「高校野球は教育の一環」という理念を掲げている。高野連の憲章にも確かにそう書かれているが、この憲章が作成されたのは第二次大戦の終戦直後である1946年(昭和21年)のことである(以降、6回も改正してきたが、「学校教育の一環として位置づけられる」との文言は46年から変わらない)。
感情を極力殺して、伝統的に野球部で続いている独自の規律に従う人間を作ろうということだろうか。先の英語コメントに「そして日本ではこれを『教育』と呼ぶ。〈父親が何でも一番わかっているってことね?〉」というものがあったが、規律を押し付けていることにはならないだろうか。
またこんなコメントもある。「Japanese kids are not allowed to have fun. They are drilled from early age on to become loyal and dutiful company drones lol(日本の子どもは楽しむことが許されていない。彼らは小さい頃から、会社に忠実で従順な雄バチになるように叩き込まれる笑)」
ちなみに「雄バチ」とは、蜜や花粉を集め女王蜂の卵を孵化させて幼虫を育て上げる「働きバチ」とは対極の、いつも巣にいて働かないハチのことを指す。強烈な皮肉だ。
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