「にじさんじ」ANYCOLORが市場変更へ なぜ、多くの企業はプライム市場を目指すのか:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
売り上げ絶好調のANYCOLORが、グロース市場からプライム市場への変更を申請した。拡大を続けるVTuberビジネスのリーディングカンパニーともいえる同社だが、今プライム市場に変更する理由は何なのか。
グローバル展開とプライム市場との親和性
市場区分を変更する最大のメリットは、海外投資家を含めた認知度の向上と企業ブランディングの強化だ。ここまで聞くと、たかが看板のためにお金を支払うメリットはないのでは? と感じた人もいるだろう。
しかし、22年6月にプライム市場へ変更したメルカリも、理由として社会的信用の獲得や国内外の知名度・取引先拡大を挙げている。グローバル展開を見越し、大きな市場を狙う企業にとって、プライム上場は登竜門のような存在だ。
日本企業ならではの認知度向上によるメリットとしては「海外投資家の資金流入」が挙げられる。実は、東証の「投資部門別売買動向」データから日本の株式市場における日々の売買代金を金額ベースで確認すると、約70%が海外投資家による取引であることが分かる。
つまり、日本市場において株式の流動性を担保しているのは海外投資家なのだ。海外投資家に自社を知ってもらい、売買の対象銘柄と見なしてもらうためには、市場区分の最上位であるプライム上場への変更は特に有効といえる。
安定的な需給環境の構築にもつながる
その他、プライム上場のメリットとしてよく挙がるのは「TOPIX指数」への組み入れだ。TOPIX指数は、日経平均株価などと異なり、東証プライム市場に上場すれば自動的に組み入れられる日本を代表する株価指数である。TOPIX指数に組み入れられることは、グロース市場における投機的な売買フローよりも、NISA口座やiDeCo、年金運用機関といった中長期的かつ安定した買い圧力によって、株価の変動が緩やかに上昇しやすい需給環境を構築することにつながる。
一般に、株価が数日で何倍にもなるような会社は、見た目の時価総額は大きくても企業価値が割引評価される傾向がある。一方、多様な投資家の売買フローによって大量の株式を売買しても値動きが穏やかな銘柄は、資金の大きい投資家にとって投資戦略が立てやすいことから資金が流入しやすく、株価の安定化が期待できるのだ。
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