スイス銀行、ドイツ銀行に続き日本銀行も? トレンド入りした「#日銀破綻」の現実性:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
クレディ・スイスの買収騒動が飛び火する形でTwitterで「#日銀破綻」というワードがトレンド入りした。果たしてそんな可能性が本当にあるのか。海外の中央銀行が“破綻”した事例などを交えながら考える。
フィリピンの事例から分かるように、中央銀行が破綻に近い状況に陥ることはまれだが、「可能性がゼロである」と断言はできない。しかし、かなり特殊な事例であることや、外貨建ての債務が原因の主要部分を占める点で、日銀の状況とは大きく異なる。
そもそも日銀が引き受ける国債は、全て日本円建てである。このことから、無制限に日本円を発行できる日銀としてはコントロールが可能な領域に存在する。一方で、自身ではコントロールできないドルやユーロといった外貨建ての国債を発行する場合には、為替変動や海外の金融政策といったコントロール不能な部分でフィリピンのような危機に陥ることがあるといえるだろう。
日銀の代わりに日本円が潰れる?
話を冒頭に戻そう。SNSでは、日銀の破綻によって預金封鎖や新円の発行といったイベントが発生し、現在の日本円が無価値になることを心配する極端な声も出ていた。日銀はこの先に万が一緊急事態に陥ったとしても、中央銀行の特権である通貨発行によって組織体としての破綻を回避する可能性が高い。その場合は日銀の代わりに日本円が“潰れる”ことになる。
そのため、今後は危機意識の高い個人や企業の間で、資産防衛が進むことも考えられる。具体的には、ドルやユーロといった外貨建てにより資産を分散する形で、各国の金融政策や政治的リスクに依存しない資産構成が広がっていくのではないか。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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