スイス銀行、ドイツ銀行に続き日本銀行も? トレンド入りした「#日銀破綻」の現実性:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
クレディ・スイスの買収騒動が飛び火する形でTwitterで「#日銀破綻」というワードがトレンド入りした。果たしてそんな可能性が本当にあるのか。海外の中央銀行が“破綻”した事例などを交えながら考える。
現在、フィリピンの中央銀行は「Bangko Sentral ng Pilipinas」(BSP)だ。1987年のフィリピン憲法および93年の新中央銀行法の規定に従って新設された、非常に若い中央銀行といえる。
それまでフィリピンの中央銀行業務を担っていたのは「Central Bank of Philippines」(CBP)だった。CBPは過去、中央銀行としての信用をおとしめる腐敗と政治的干渉によって大きな問題を抱えていた。まず、当時のフィリピン経済は、高いインフレ、増加する外国債務、停滞したビジネス環境に苦しんでおり、CBPが金融政策によって効果的な解決策を導き出せていなかった。
さらに、当時の政権による政治的な干渉と腐敗、縁故主義がはびこっており、中央銀行の独立性が妨げられるといった問題も存在し、機能不全に陥っていた。政府による経済政策の失敗、財政赤字の拡大によって外貨建ての債務が膨らみ、対外債務の支払危機が発生するなど、80年代のフィリピンにおける金融政策情勢は混迷を極めた。
その後、93年にCBPはあくまでBSPの業務を「引き継いだ」としているが事実上の「破綻」に近い状況であったといえるだろう。
この期間、国民の預金が封鎖されたり、通貨が無効になったりするような事象は発生しなかった。その代わりに、フィリピンペソの対円相場は80%以上暴落した。80年のフィリピンペソ/円の為替レートが29円であったのに対して、93年には5円を下回る水準で取引されている。旧中央銀行の失敗と、新たな中央銀行の発足というイベントは、「劇的な通貨安」という形で国民に跳ね返ってきたのである。
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