ペンギン池騒動と職場セクハラの共通項 笑いと非難の境界線はどこに:働き方の見取り図(1/4 ページ)
お笑いタレントが動物園のペンギン池に落下し物議をかもした。擁護する声がある一方、ネット上には「動物の尊厳を傷つける行為」「やっていることが回転ずし店での迷惑行為と変わらない」など厳しい言葉があふれた。自ら池などに落ちて笑いを誘うシーンは見慣れた光景でもあるはずなのに、今回の行為は一体何が問題だったのか。
テレビ番組の生放送中、ペンギンたちのいる池にお笑いコンビ、オードリーの春日俊彰さんが繰り返し自ら落ちたことが物議をかもしました。日刊スポーツの記事は、ロケ地となった動物園「那須どうぶつ王国」(栃木県那須町)からテレビ局側に抗議があったと伝えています。園は4月4日に公表した文書で、春日さんや番組制作責任者が来園し、謝罪を受けたことを明らかにしました。
春日さんの行為に対しては、お笑いタレント仲間を中心に擁護する声があるものの、ネット上には「ひどい」「動物の尊厳を傷つける行為」「やっていることが回転ずし店での迷惑行為と変わらない」など厳しい言葉があふれました。ただ、テレビ番組でお笑いタレントが自ら池などに落ちて笑いを誘うシーンは見慣れた光景でもあるはずです。それなのに、今回の行為は一体何が問題だったのでしょうか。
「ペンギン池落下」 非難の的となった2つの理由
春日さんが自ら池に落ちるに当たり、スタジオにいるMCの加藤浩次さんからは再三にわたって「(池に落ちないように)気をつけろよ!」と声がかかっていました。それは、実際の言葉とは裏腹に「池に落ちると笑いがとれるぞ」という“お約束”への期待であり、春日さんはそんな加藤さんや視聴者の笑いへの期待に応えようとして池に落ちたのだと思います。
そう考えるとペンギン池に落ちた春日さんも、「気をつけろよ」と前フリした加藤さんも、その動機に悪意はなく、視聴者を楽しませようとしていたに過ぎません。エンターテインメントとして純粋に笑いを起こそうと振る舞っただけです。似たシチュエーションでのお約束として思い出されるのは、リアクション芸人のカリスマ的存在だった上島竜兵さんの「絶対に押すなよ!」があります。
熱湯風呂に足をかけながら絶対に押すなと訴えるものの、実際は押されてしまい熱湯風呂に落ちることで笑いが起きるというお約束。そんな、誰もが素直に笑い愛された熱湯風呂のお約束とは異なり、ペンギン池騒動のお約束が非難の的になった理由は大きく2点あったと思います。
(1)ペンギンたちに恐怖感を与えるなど、実害が想像される場面だった
(2)先輩タレントの加藤さんが後輩の春日さんに圧(プレッシャー)をかけたように見える形だった
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