ローソン、「実質半額」コーヒーサブスクの勝算 1杯50円でも痛くないワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
ローソンが愛知県内の店舗でコーヒーのサブスク実験を開始した。毎日利用すれば、通常価格の「実質半額」となる値段でコーヒーを買える。果たしてどんな勝機があるのか。
ただし、毎日利用されたとしてもローソンにとっては店舗への集客効果というトータルの売上向上効果が期待できる。コーヒーのサブスクを利用することで、消費者はセブン‐イレブンやファミリーマートといったコンビニならどこでもいいというマインドではなく、毎日ローソンを選び・訪れる可能性が高まる。これにより、菓子や弁当、日用品といった他商品の購入も促される可能性があり、店舗全体の売上向上効果が期待できる。
ローソンの客単価が23年2月時点で794円であり、22年2月期の粗利率30.9%を当てはめると、顧客1人当たりの粗利は約245円となる。仮に、コーヒーサブスクで来店した顧客が他の顧客と同じように買い物を行う場合、110円のコーヒーが実質半額となったとしても全体の粗利のうち、8割弱の粗利は保たれる。
つまり、サブスクの効果を商品単体ではなく、集客全体の目線で見ると、今回の施策によるコーヒーの「値引き」は集客コストとして正当化される可能性が高いといえる。これはコンビニ各社が発行する弁当の100円引きクーポンなどと比較しても割安な集客施策と整理することもできるだろう。
デジタルマーケティングにもメリット
そもそも、今回の取り組みは、「実験」という立ち位置だ。万が一、愛知県での実験のみで終わったとしても、検証結果はデジタルマーケティングへ活用できるため、決して無駄にはならない。顧客の利用データを収集し、例えば、「サブスクプランの提供で店舗の売り上げがどのように変わるのか」や、「客単価がどのように変化したのか」、そして「コーヒー単価が安くなったら、コーヒーとの掛け合わせでどんな商品が買われているのか」といった分析が可能になる。
こうしたデータを活用して、より効果的なマーケティング活動を展開できるし、取り組みが大きくニュースに取り上げられた時点でプロモーション的には既に成功しているともいえるのかもしれない。
これらの要素を踏まえると、ローソンがコーヒーのサブスクサービスに乗り出した背景には、店舗売上の最大化や、競合他社からの顧客引き抜き、そしてブランド力の向上といった効果があるという点が大きいといえるだろう。
コンビニ業界は近年、非常に競争が激しくなっている。日本全国にはセブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンといった大手3社をはじめとする多くのコンビニが展開されており、人口減少や労働力不足の影響から、収益性向上やブランドの統廃合が相次ぐ。
今回のローソンの施策が吉と出るか凶と出るかの行方は、実施後の客単価や粗利率の推移から確認していく必要があるだろう。もし、ローソンがサブスクの解約率を下げられる施策もセットで提供できれば、ローソンが成功した後に乗っかろうとするライバル企業への顧客流出を防ぎ、一人勝ちすることも不可能ではないかもしれない。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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