「量より質」のSUBARU、5年ぶりの社長交代でどう変わる?:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(2/3 ページ)
SUBARUの社長が、この夏前に代わります。社長の交代によって、SUBARUはどのように変わるのでしょうか? 山あり谷ありなSUBARUの過去10年の歩みを振り返り、この先を占ってみたいと思います。
「量より質」をとった経営計画
しかし、好事魔多し。SUBARUはここでつまづいてしまいました。完成検査問題です。SUBARUでは長年、適切ではない検査員が、クルマの完成検査を行っていたのです。この問題を契機に、吉永氏を含む経営トップが責任をとって辞任。急きょ、現在の社長である中村氏が経営のかじ取りをすることになったのです。
完成検査問題で揺れる中、中村新体制の元に策定されたのが、25年までの中期経営計画「STEP」でした。これは「組織風土改革」「品質改革」「SUBARUづくりの刷新」を重点としたもの。「質的成長のキャッチアップ」とも説明されました。
年間生産台数の拡大など、10年代前半に成し遂げた大きな「量的成長」に対して「質的成長」が追い付いていなかったため、それを是正しようというわけです。信頼の回復が第一で、数を追わない。力を溜めて、内容を充実させ、次世代に備える。それが「STEP」の狙いでした。
そんな折、19年には世界をコロナ禍が襲います。もちろん、SUBARUの業績も悪化。21年には年間生産台数が約74万台にまで落ち込んでしまいます。これは12年の約75万台と同じ規模で、10年かけて成長してきた分が消えてしまうほどの落ち込みでした。
しかし、21年5月に発表した中期経営計画の進捗報告「STEP2.0」の中で、SUBARUは「確実に進捗している手応えを感じている」と主張。なんと、重点市場とした米国で、9年連続マーケットシェア前年越えを達成し、11年には2.09%だったシェアを、20年には4.2%にまで高めていたのです。
さらに20年1月には技術ミーティングを開催して、電動化のさらなる推進を掲げます。これは「STEP」のテーマの1つ、「SUBARUづくりの刷新」の具現化で、30年までに世界販売の40%をEVもしくはハイブリッドとするというのです。
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