高騰するマンション価格、2010年の約2倍に “バブル”はいつ弾けるのか:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
全国のマンション価格は13年前と比較して「ほぼ2倍」まで値上がりしている。長く“安全な資産”と見なされてきたマンション価格が、値下がりする時は来るのか。
国土交通省が4月28日に発表した不動産価格指数によれば、商業用の不動産が前期比で1.3%下落した半面、住宅価格は0.1%と小幅ながら上昇した。足元の上昇を最も牽(けん)引しているのは区分所有マンションで、指数値は189.4にまで上昇している。不動産価格指数は、2010年の価格を100とおいた指数であるため、全国のマンション価格は13年前と比較して「ほぼ2倍」まで値上がりしていることになる。
これを年平均成長率(CAGR)に直すと、全国の区分所有マンションの平均的な年率リターンは複利ベースで5.04%となる。銀行が提供する住宅ローンの金利はここ13年の低金利政策によって、固定金利でも高くて年率1%程度であった。マンションの資産価値の上昇を踏まえると、実質的な住宅ローンの金利は年率-4%となり、借金すればするほど、年率4%のリターンで資産が増えるという結果になったのだ。
年率4%の水準といえば、日本株の平均的なリターンとほぼ同水準の結果となる。さらに、ローンによって仮に自己資本の5倍程度の借り入れを実施していたとすれば、自己資本ベースでみた年率リターンは20%と、米国株をもはるかにしのぐリターンで資産形成できただろう。
もちろん、新築から中古になることで再販売時の価格が割り引きされてしまうという事情もあるが、都心部では中古マンションの価格も大幅に高騰しており、10年から倍近くになっている。これらを踏まえると、エリア選びさえ間違わなければ、ここ十数年はマンションを借りるよりも買う方が正解だったと言って差し支えないだろう。
それでは、全ての不動産物件が大きく値上がりしているかと言われると、実はそうでもない。不動産価格指数を区分別に見ると、「住宅地」の109.8や、「戸建住宅」の117.6、「商業用不動産」の132.0と、伸び率が低いセクターも数多くみられる。その一方で、区分所有のマンションと性質が近いマンション・アパート(1棟)は157.9と高い。
ではなぜ、区分所有マンションや一棟マンション・アパートが大幅な値上がりを見せているのだろうか。これには、いずれも「不動産投資の物件として好まれる」ことが関係している。
さらに、一棟よりも区分所有のマンション価格が高騰するのは、投資目的ではなく、居住するという実需の目的で買いが入りやすいことも大きな要因の一つだろう。
居住用の不動産は、コロナ禍で打撃を被るばかりか、リモートワークの推進に伴って、質の高い住環境を消費者が求めるようになったことで価値が高まった。低金利も相まって住宅を買う意思決定が発生しやすい環境下にあり、堅調な価格上昇を支えてきたという経緯がある。
4月28日には植田日銀新総裁が、現状の緩和的な金融政策に対して当面の間「ハト派」姿勢を継続する旨の会見を行ったとして話題となった。22年12月に黒田前総裁が公表したイールドカーブコントロールの見直し時には、住宅ローンの金利が一時小幅に上昇する動きもあった。しかし、そこからの大幅な政策転換が当分見られなかったことで、SBI新生銀行をはじめとした住宅ローン販売各社が変動金利を引き下げるという動きに転じた。これが再びマンションの購買熱を高め、さらなるマンション価格の高騰をもたらす可能性もある。
ただし、日銀の政策転換はマイナス金利導入時も、イールドカーブコントロール見直しの際も、為替介入の際も、事前には「考えていない」としながら不意打ちの姿勢で行われてきた。こうした経緯を踏まえると、足下でターゲットとしてきた2%を大幅に超える物価上昇に見舞われている中、大胆な政策の見直しが発生するリスクには注意が必要だろう。
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