なぜ人は「激安タイヤ」を買うのか アジアンタイヤの存在感が高まるリスク:高根英幸 「クルマのミライ」(2/7 ページ)
アジアンタイヤが日本で存在感を増している。大きな理由として「安い」ことが挙げられる。しかし、本当にそれでいいのかというと……。
どうしてラベリング制度が登場したのか
日本や欧州ではタイヤの性能を表示するラベリング制度を導入している。これは転がり抵抗とウェット性能を数値によってグレーディング(等級制付け)し、タイヤ性能を分かりやすく表示するものだ。
欧州にもラベリング制度はあって、内容は日本のものに近いが、欧州版のほうが範囲が広くすべてのタイヤをグレーディングするものとなっている。つまり日本のほうが基準としては厳しい。ラベリング制度そのものは評価基準を明確にしており、タイヤの性能を見える化しているから、購入時の参考にするべきものだ。
クムホとハンコックは韓国のタイヤメーカーでありながら、日本のJATMA(日本自動車タイヤ協会)にも対応しており、これにより価格と燃費性能、ウエット性能や静粛性などが同一基準で比較できる。新興メーカーの製品は必ずしも「安かろう悪かろう」とは言い切れないので、日本のタイヤラベリング制度に準じた性能表示があれば、購入時の安心感も高まりそうだ。
現実の公道では、たった数十センチの制動距離の差で運命を分けることもあるのだから、タイヤの性能にはもっと気を配ったほうがいい。自動車保険は手厚いサポートをしてくれる商品に加入していても、実際にクルマや乗員を守るタイヤについては、よく分からないので価格で選んでしまう、というのであれば非常に危険だ。
ウエット性能は、雨天走行時の安全性を大きく左右する要素だ。高い保険料を払って、ウエット性能の低いタイヤを履き、スリップ事故を起こして保険金の支払いを受けて翌年の保険料が上昇するようでは、安いタイヤを購入する意味がない
タイヤの性能や品質に無頓着で、価格だけでむやみに選んでいると後で後悔することになりかねない。それくらいアジアンタイヤは玉石混交、新興ブランドが続々登場している時代なのだ。
中国にもタイヤラベリング制度はあり、転がり抵抗とウエットグリップのほか、静粛性までグレーディングされている。アジアンタイヤを手広く輸入販売している商社などは、品質管理を高め、性能を高めている。筆者もアジアンタイヤを履いているクルマを所有したり、試乗したりしたこともあるので、それほど悪いタイヤばかりではないことも知っている。
しかしアジアンタイヤの販売の現場では、ライバルブランドとの競争があるので、どうしても価格が前面に押し出されがちだ。また、タイヤの評価は転がり抵抗やウエット性能だけで決まるものでもない。
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